ゼレンスキー氏は演説の中でもプーチン氏を厳しく糾弾した。同氏は「プーチン大統領」とは呼ばず、「プーチンは‥」と呼び捨てる。同氏はプーチン氏を「テロリスト」と呼んで憚らない。国内を荒廃させ、多くの国民を殺害したロシアの指導者にそれ以外の選択肢はないからだ。
その点、大西洋を越えた米大陸からのゲストにゼレンスキー氏のようなロシア批判を期待しても無理がある。米国にとってウクライナ戦争はローカルな戦争に過ぎないのだ、といって米国を批判はできない。米国はロシアの攻撃を受けるウクライナを軍事的、人道的に支援してきた最大支援国だからだ。
英国の「キングス・カレッジ・ロンドン」(KCL)のテロ専門家、ペーター・ノイマン教授は15日、ドイツ民間ニュース専門局nTVでの討論会で、「数多くのテロ事件が過去、米国情報機関の情報提供によって未然に防止された。欧州は情報収集能力、サイバー防止能力などで米国に完全に依存している」と指摘していた。欧州の政治家、メディアは米国、特に、トランプ氏に対して批判的な立場を取るが、安全保障分野では欧州は米国に頼ってきたわけだ。
ちなみに、トランプ大統領がウクライナ停戦交渉でイニシャチブを取ることで、外交世界で孤立してきたロシアのプーチン大統領に国際舞台にカムバックできる機会を提供したことになる。
ゼレンスキー氏の最大の懸念はウクライナ戦争の停戦問題がウクライナ抜きで米ロ両国で決定されることだ。同氏はミュンヘンでも「ウクライナ抜きの停戦合意は絶艇に受け容れられない」と強調している。同時に、米ロ両国の外交攻勢に押され気味の欧州からは「米ロ、ウクライナに欧州も停戦交渉の参加すべきだ」という声が高まってきている。
米国はウクライナの交渉参加には理解を示しているが、欧州代表の参加には依然、消極的だ。ルビオ米国務長官は「参加国の数が増えれば、それだけ会議は難しくなる」と述べ、ウクライナ停戦交渉で欧州代表の参加を歓迎していない。