ブリヂストンのプレミアム・コンフォートタイヤREGNO GR-XⅢのSUV、ミニバン等向け「RV」の試乗テストをしてきたので、お伝えしよう。
2024年3月にセダン用REGNO GR-XⅢの試乗テストを行ない、そのレポートを掲載しているが、今回はそのRV版が発売されテストする機会を得た。
試乗車はメルセデス・ベンツEQB、アルファード、クラウンクロスオーバーで、他にもサクラやレクサスLBXなども用意されていた。試乗テストは一般公道とクローズドコースで前モデルのGR-XⅡとの比較もできた。
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まずは、クラウンクロスオーバーでテストコースを20km/hほどで走行して全体のフィールをチェックし、スラロームを行なう。そして40km/hと60km/hの速度でもスラーロームをし、次に大きな凸を乗り越え、ロープを張り巡らせた路面を30km/hほどの速度で通過する、というコースレイアウトだ。
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スラロームではGR-XⅡと比較して、GR-XⅢ RVの手応えがしっかりとあり、操舵初期のレスポンスも良いと感じる。速度を上げてのスラロームではタイヤの剛性の違いが明確で、GR-XⅢ RVの方がしっかり感が伝わってくる。それでいてサイドウォールの柔らかさがあるので、これまでの常識とはことなるフィーリングを得た。
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そして障害物を乗り越えるゾーンは、連続した振動の入力に対して、振動と音が一瞬で収まっている。乗り越えた瞬間だけ振動と音があり、通過後には静粛性がすぐに戻っているという印象だ。GR-XⅡは、乗り越えた時の入力に大きな違いは感じないが、振動や音が乗り越えた後まで少し引きずっているという違いがあった。
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一般道では絶対評価となるため、表現が難しいがEVのメルセデス・ベンツEQBでは、走行音すら聞こえてこない高い静粛性があり、感動的でもあった。またつぶざら路面でも音の発生が小さく、高い静粛性は保たれていると感じた。
もともとプレミアムモデルであり、しかもEVのため高い静粛性を持っている車両だが、これほどまでに静かに走行するとは想像を超える静粛性があった。さらに滑らかさも際立ち、スベスベのシルクでも触っているかのような滑らかさは運転していて気持ちが良い。
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こうした優れた静粛性や滑らかさなど、どんな技術を投入しているのかを見てみよう。
意外なのは、インプレッションとしてスラローム時に感じた応答性の良さだが、じつはそうした操舵応答のレスポンスを上げる狙いはなく、別な性能を上げた結果、レスポンスが良いと感じることにつながっていることもわかったのだ。
ENLITEN技術
このGR-XⅢ RVはセダン用のGR-XⅢのトレッドパターンをカスタマイズすることでRV用としたタイヤだ。SUVやミニバンの特徴として車高の高さがあるため、ふらつきやすいことや広い室内空間を持っていることから走行音が侵入しやすいなどの特徴がある。そうしたネガ要素をパターン変更をすることで対策しているのだ。
狙った品質は空間品質、走行性能、サスティナビリティの3つをキープしながらユーザーニーズに応えるタイヤとしている。課題としてはEVも含め重量増があり、安定感や偏摩耗、後部座席の乗り心地といった項目を高いレベルに引き上げている。
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その基盤技術がエンライトン(ENLITEN)だ。コンセプトは薄く、軽く、円くであり、タイヤに求められる性能円を極限まで広げ、そこからユーザーニーズの性能を引き上げるという手法であり、全体の性能円が大きくなっているために、従来品より必ず良くなっているというものだ。
例えば、ミニバンであれば静粛性と転がり抵抗を性能アップさせたとしても、背反する操安性や制動力などは従来品よりもそもそも高いレベルからスタートしているので、全体に良くなり、かつ、求めた性能はさらに高いレベルにあるという製品にしているわけだ。
エンライトンではこれまでブリヂストンが開発した数えきれないタイヤのデータをまとめ、性能開発に活かす技術だ。GR-XⅢでは、まずゴムを極めている。すでにゴムの分子、ナノレベルまで解析できており、分子レベルでの配合設計ができる技術を持っていると言う。
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そして解く技術として、過去の膨大なデータをAIで解析し、ひとつひとつのポリマーの役割がわかり、どこに配置すると要求性能を引き出せるのか、そうした配置設計ができる技術を持っている。
さらに接地を極める。薄くすることを基本とし、薄くすると接地はいびつにな変形になる。すると性能が悪くなる。そのため、従来は変形しないように、部材を足して、厚くして重くしていた。が、エンライトンにより、部材を足すことをやめたのだ。
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車両の動きをしっかりと見て、どういう接地状態なのかを改めて研究。そのため、社内テストドライバーだけでなく、レーシングドライバーにも入ってもらい、もう一歩深く理解することをしたという。
そうしたリアルなフィーリングからタイヤの理想のフィーリングをシミュレーションでつくり、その理想にするにはどうした構造にしたらいいいか? となり、リアルとデジタルの融合によってプライ張力を均一にすることで、全体の変形を均一にして、理想の接地状態を作り出したのだ。今回のレグノGR-XⅢ RVでは立川祐路選手に開発の手伝いをしてもらったという。
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こうした基盤技術に基づき、RVではパターンを変えることで要求性能を満たすことができたわけだ。では具体的にパターンのどこを変更したのか見てみよう。
まずは、しなやかな変形をつくることがある。薄く、軽く、円くが狙いで、しなやかな変形をすることで路面からの振動を吸収し、乗り心地を良くしている。しなやかに変形するため接地も良くなり、スラロームをした時にリニアで運転しやすいと感じるケース剛性にして背反を解いているのだ。これが冒頭、感じた応答の良さという操安性の良さにつながっていることがわかった。
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これはゴムの弾性に頼らない設計がキーになる。スラロームでゴムが強くねじれた時に弾性に頼ると、その戻る力も一気に戻りスタビリティを損なう。エンライトンでは、ねじれの戻りをジワリと戻る技術を投入しているために、リニアで運転しやすいと感じているわけだ。
そしてレグノブランドだけに乗り心地と静粛性は必須要件だ。そのためにゴムを柔らかくすると達成できるが、背反として操縦安定性や摩耗といった性能がダウンしてしまう。そこでエンライトンでは柔らかくすることを止めている。代わりに、路面からの音を吸収するという発想に変更しているのだ。
発生するノイズの種類のいくつかをタイヤ自体が吸収し、吸収しきれない音だけが聞こえるというサイレントゴムを採用して静粛性を上げているのだ。
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車高が高い車両のふらつきについては、ショルダー部に負荷がかかり、硬くすると収まるものの上下も固くなるので、乗り心地が悪くなってしまう。その背反性の解決は、セダン用GR-XⅢのショルダー部のブロックを大きくし、固くした。そしてセダン用にあるサイプを抜いて剛性を上げている。その代わりに、ダイヤモンドスロットというサイプを最低限入れることで、横方向の剛性を保ちながら上下の圧縮剛性を下げて、乗り心地を良くし、音を吸収するという技術を投入している。
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そして最後に軽量化についてだが、タイヤのカットモデルを見れば一目瞭然で、ゴムの厚みがまるで異なっていて、狙い通りの軽く、薄くが反映されているのだ。これがしなやかな変形を産み出していることが理解できる。さらにタイヤサイズによっても異なるが、従来品と比較して1本あたり、1kg〜1.5kgも軽量化ができているというので、まさに次世代のタイヤと呼べる新技術満載のタイヤというのが解った。
じつは、もうひとつエンライトンで力をいれている技術にサーキュラーエコノミーがある。再生可能資源をどこまで使えるかという課題に対し、最新の技術を投入しているのだが、この説明はまた別の機会にお伝えしたいと思う。
以上がREGNO GR-XⅢ RVへ投入した技術であり、操縦安定性が良くなったと感じることや、障害物を乗り越えた時の音や振動の収束の早さ、そして横剛性のしっかり感の違いなどの理由が納得できた。今後のブリヂストンタイヤはこのエンライトン技術によって、どんどんと進化していくことが明確に理解できたテスト試乗だった。
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