内々で穏便に済ませようという意識

 2005年に管理組合から問い合わせを受け、24年に解体を決定するまでの約20年間、東急不動産は「問題ない」との回答や虚偽の回答を繰り返していたわけだが、なぜ同社はこのような対応をとったのか。

「一般的に不動産会社には日々、管理組合から多くの問い合わせが寄せられており、早急に対応しなければならないものから、事業者側による対応が不要なものまで内容はさまざまであり、内容によっては担当者が聞いているふりをしてやりすごそうとすることもあるでしょう。また、住居というのは極めて基本的なインフラであるがゆえに住民はナーバスになりやすい分、事が大きくなりやすいという性質があり、メディアやSNS上に情報を流されると会社として大きなダメージを負う可能性があるため、できるだけ内々で穏便に済ませようという意識が働きがちです。

 今回の件でいいますと、最初は住戸内に発生したカビがきっかけだったということなので、東急不動産は軽微な事態だととらえて穏便に済ませようとしたが、徐々に事の重大さを認識して『隠したい』という意識が働いた可能性はあるかもしれません」(牧野氏)

 では、このような重大な施工不良問題に直面した場合、住民はどう対応すべきなのか。

「問題が個別の住戸に関するものなのか、建物全体に関するものなのかでも違ってきますが、個人が大手の不動産会社に問い合わせをしても、なかなか動いてくれないでしょうから、管理組合として申し入れをすべきです。また、建築の専門知識がない一般の消費者と不動産会社の間には情報の非対称性が存在し、不動産会社に“丸め込まれてしまう”可能性もあるため、管理組合がインスペクション(住宅診断)会社に依頼して独自に調査し証拠資料を揃えていくといったことが有効になるケースもあります。

 ただ、施工不良問題で難しいのは管理組合内部も一枚岩になりにくいという点です。住民のなかには施工不良が公になることで物件の資産価値が下がると考えて、大事にすることに抵抗する人もいます。長期間にわたり不動産会社と協議するのを嫌って、会社側の提案に従ってさっさと退去すればよいと考える人も出るので、住民の間での合意形成というのも大きな難題となってきます」(牧野氏)

(文=Business Journal編集部、協力=牧野知弘/オラガ総研代表取締役)

提供元・Business Journal

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