海の王者といえば、頂点捕食者であるシャチ。

しかしそんなシャチから逃れるため、驚くべき戦略を採るクジラがいることが明らかになりました。

米ワシントン大学(UW)の研究チームは、一部のヒゲクジラがシャチには聞こえない低い周波数で鳴いていることを発見しました。

シャチは通常100ヘルツ(Hz)以下の音を聞き取ることができません。

そこで特定のヒゲクジラの種は100Hz以下の超低周波の鳴き声を発し、まるで「音響ステルス」のようにシャチから身を守っていたのです。

研究の詳細は2025年1月31日付の科学雑誌『Marine Mammal Science』に掲載されています。

目次

  • ヒゲクジラは「戦闘派」と「逃走派」に分かれる
  • 逃走派はシャチに聞こえない周波数で歌う

ヒゲクジラは「戦闘派」と「逃走派」に分かれる

画像
シャチがシロナガスクジラを捕食しているところ/ Credit: UW – Ghostly flight species of baleen whales avoid attracting killer whales by singing too low to be heard(2025)

クジラは美しい歌を持つことで知られています。

ザトウクジラのメロディアスな歌は広く知られており、古くから人々を魅了してきました。

しかし一方で、この歌がシャチに聞こえてしまうと、クジラ自身が狩りのターゲットになってしまう可能性があります。

シャチに見つかったとき、ヒゲクジラの行動には主に2つに分かれます。

1つは「戦闘派」で、もう1つは「逃走派」です。

戦闘派にはセミクジラ、ホッキョククジラ、コククジラ、ザトウクジラが含まれ、シャチに襲われると群れで反撃することがあります。

対する逃走派にはシロナガスクジラ、ナガスクジラ、イワシクジラ、ニタリクジラ、ミンククジラが含まれ、シャチの襲撃を受けるとすぐに逃げる傾向があります。

そして今回の新たな研究で、戦闘派と逃走派には歌い方に大きな違いがあることが判明しました。

逃走派はシャチに聞こえない周波数で歌う