逆風は中国製EVでした。中国政府がインフラを含め、強力な後押しをしたことでEV市場で中国車は圧倒的なレベルを築き、日米欧の自動車会社が苦境に立たされます。日本も厳しい打撃を受けていますが、中国市場に依存し過ぎていたドイツは深刻な問題を抱えてしまったのです。ドイツ車はアメリカ市場ではあまり売れていません。アメリカの2024年メーカー別販売台数を見るとBMW40万台、ベンツ37万台、VW37万台、アウディ20万台です。ちなみに日本車はトヨタが233万台、ホンダ142万台、日産92万台などで韓国車もよく売れています。いかに欧州車がアメリカ市場に浸透していないかお分かりいただけると思います。

欧州車がアメリカで売れない理由は価格競争力がそもそもなかったからです。労賃が高く労働条件が経営側に厳しいのは欧州の特筆すべき点であり、故に高級路線ではないと産業が維持できないわけです。ところがアメリカの高級車とはガタイがデカく強そうなGMやフォード製のクルマであり、欧州のラグジュアリーとは感性が違います。となればドイツの中国への依存度が下がったとしてもその販売減を補う市場がない、ということになるのです。

日本の産業界全般を見るとリスク分散はよくできていると思います。アメリカ、中国、東南アジア市場を主力とし、欧州がそれに続き、中東、アフリカにも徐々に市場を広げています。欧州でも日立のように鉄道を含めインフラに圧倒的強みがある企業もあり日本の輸出産業は世界の中では安定的でうまく分散されていると思います。今日のタイトル「一国への依存度を下げよ」とはカナダやドイツ向けのメッセージにも聞こえますが、マクロばかりではなく、ミクロ、つまり各企業レベルでもそれぞれの顧客がどこにあるのか、国家のリスクとそのヘッジは出来ているのかといった経営者の意識は常に必要だと思います。

また逆にカナダのように焦りが出ている場合には日本企業が手を差し伸べれば日本企業にとってもメリットがある話かもしれません。カナダは市場規模がアメリカの1/10しかないので国内消費額は知れています。ホンダがカナダに大規模投資をしたのもアメリカ市場をにらんでの話であります。それでもトランプ関税政策は日本にフォローの風もあると前向きに捉えてみたいところです。

石破首相とトランプ大統領 首相官邸HPより