そして彼が病院で診察を受けたところ、彼の血液が白く濁りっているとわかりました。

その血液を遠心分離機にかけると、血漿が本来の薄い黄色ではなく「ミルク色」に変化してたのです。

牛乳を大量に飲むことで、血の色まで牛乳色になっていました。どうしてでしょうか。

まるで「ミルク中毒」 白濁した血液の理由とは?

通常、脂肪は消化・吸収されると、血液中を「カイロミクロン」という微細な粒子によって運ばれます。

しかし、今回のケースでは、摂取した脂肪の量が多すぎて処理が追いつかず、血液中に蓄積。血漿が「牛乳のように白く濁る」状態になったのです。

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(左)入院時に採取された血液と退院後に採取された血液。入院時のサンプルは全体的に白濁している。 (右)同サンプルをそれぞれ遠心分離機にかけたもの。入院時は血漿がミルク色になっているのに対し、退院後は本来の薄い黄色に戻っている / Credit:Canva, Alex N. Bastick( Maasstad Hospital)et al., International Journal of Clinical Medicine(2012)

医師らが男性の血液を調べると、トリグリセライド(血液の中の脂肪の1つである中性脂肪)が非常に高い数値を示していました。

高トリグリセリド血症では、1000 mg/dLを超えると膵炎のリスクが高まると言われていますが、今回の男性の血中トリグリセリドは驚異の16713 mg/dL(通常の100倍以上)。

これほどの数値は、医学的にも非常に稀なケースです。

検査では、血糖値も1350 mg/dL(通常の約13倍)と異常に高いことが分かりました。

治療の第一歩として、医師たちは輸液とインスリン療法を開始。

さらに、余分な脂肪を取り除くために、血漿交換療法(Plasma Exchange, PE)を2回実施しました。

この治療によって、血中のトリグリセリドを除去し、許容レベルまで低下させることに成功しています。