まず、目をこする(機械的刺激)と、目の表面を覆う「結膜上皮」の細胞(結膜上皮細胞)が物理的に引き伸ばされます。
この結膜上皮細胞には、「Piezo1(ピエゾ1)」という機械感受性イオンチャンネルがあります。
簡単に言うと、これは細胞膜に埋め込まれているタンパク質であり、圧力や引っ張りを感知すると開く性質を持っています。
そのため、目がこすられるとPiezo1が活性化して細胞膜に開口部ができ、その結果、細胞外のカルシウムイオンが細胞内に流入するようになります。
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では、細胞内にカルシウムイオンが流入するとどうなるのでしょうか。
細胞内のカルシウム濃度の上昇が原因で、「炎症の引き金」となる経路が連鎖的に活性化し、最終的に炎症性サイトカインと呼ばれるタンパク質の一種である「IL-6(インターロイキン6)」が生成されるのです。
このIL-6は体内で炎症が起きた時に免疫細胞や組織から放出されるもので、免疫システムの調整や炎症の制御に重要な役割を果たします。
しかし、過剰なIL-6の生成は、慢性的な炎症や自己免疫疾患の原因となります。
つまり、「目をこする」という機械的刺激には、Piezo1の活性化を通して、炎症性サイトカインIL-6の生成を促進する効果があったのです。
ラットでも確認!「目をこする」物理的刺激そのものが炎症の引き金になる!
研究チームは、「目をこすると炎症が生じるメカニズム」を、ラットの眼を使用した実験でも確認しました。
ラットの眼にPiezo1の活性剤を投与し、観察することにしたのです。
その結果、ラットの細胞では、炎症性サイトカインの増加と好中球の浸潤が観察されました。
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