法律では禁止されているものの、米国やカナダには一夫多妻の大家族が少なからず存在する。その多くは独自の信仰を持ち、外部との接触の少ないコミュニティを築いているため、その内情を窺い知ることは難しい。だが2021年、「カナダ最大の一夫多妻ファミリー」として知られる家に育った青年が、SNS「TikTok」で自らの育った環境について暴露し話題になった。
マーリン・ブラックモア（19歳）は、カナダ・ブリティッシュコロンビア州バウンティフルの巨大農場で生まれ育った。ブラックモア家はカナダでも最大の一夫多妻ファミリーとして知られ、マーリンの父ウィンストン（64歳）には現在22人の妻（最も多い時には27人）と、上は44歳から下は乳児までの150人の子どもがいる。ウィンストンは末日聖徒イエス・キリスト教会の分派で原理主義で知られる教団FLDSの幹部であり、2017年には一夫多妻を禁じる法律に違反したことで有罪判決を受けている。
現在は母と同母の兄ウォーレン（21歳）と共にバウンティフルを離れたマーリンであるが、「ずっとこのことを話したかった」と、SNSでブラックモア家の内情について明かし始めた。この活動にウォーレンや母方のいとこでもある異母兄ムーレー（19歳）も賛同し、3人は自らの体験を動画を通して発信し続けている。
一家は農業で生計を立てており、妻たちや子どもたちが総出で農場で働いていたそうだ。マーリンには同じ年に生まれたきょうだいが12人いるというが、その中には全く同じ日に生まれたきょうだいが2人いるのだという。もちろん三つ子で生まれたわけではなく、全員母親が違うのである。なお、この年に生まれた子どもたちは皆、Mから始まる名前を付けられたという。
ウォーレンによると、ウィンストンの27人の妻は6つの別々の家族出身で、血のつながった姉妹同士でグループを作っていたそうだ。一家はそれぞれ別々の家に暮らしており、だいたい一軒の家に2人の妻が住んで、子どもは自分の母親と共に暮らしていた。マーリン、ウォーレン、ムーレーは母親が姉妹で同じ家を共有していたこともあり、兄弟でありながら親友と呼び合うほど親しく育った。
子どもたちは自分の生物学的な母親を「ママ」と呼び、他の妻たちはそのファーストネームにマザーをつけて「マザー〇〇」と呼んでいた。バウンティフルには独自の学校があり、ウォーレンによると19人のクラスメイトのうち、9人はきょうだい、7人はいとこ、2人は甥だった。もちろん全員が同い年だ。
記念日などには一族が勢ぞろいし、巨大なホールを借り切った大パーティーが開かれたそうだ。一方で個々の誕生日パーティーはわりと「普通」だったそうで、大抵は親友たち（歳の近いきょうだい）がプレゼントを持ってきてくれて、家でささやかなパーティーを開いたのだという。
これほど大規模でないものの、米国やカナダでは未だ多数のFLDS信者コミュニティが存在し、一夫多妻の強制、DVや性的虐待などが社会問題になっている。前述の通り、3人はすでにバウンティフルを去っており、現在は父親とも決別している。3人とも一夫多妻に否定的であり、そのあり方を「カルト」だと批判するが、コミュニティに残ったきょうだいたちは父親と同じく一夫多妻制の結婚をしているという。
提供元・TOCANA
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