なぜ大型の捕食者がいる地域で中型の肉食恐竜が存在しなかったのか?

謎を解く鍵となったのは、大型種の子どもでした。

研究者たちが、卵からうまれた大型種の子どもの毎年の生存率を予測した結果、成長中の大型種の子どもが、まるで地域全体の中型種のように振る舞うことを発見したのです。

論文の第一著者であるシュローダー氏はこの発見について「大型肉食恐竜のいる生態系は、彼らの若者でいっぱいだった」と述べています。

これらの見解は、大型の肉食恐竜が反映している地域では、大型種の若者たちが生態系のかなりの部分を占めており、独立した中型種の参入が絶望的であったことを示します。

単純なデータが大発見につながった

恐竜の体重分布という基本的な分析が大発見につながった
恐竜の体重分布という基本的な分析が大発見につながった / Credit:Canva

今回の研究により「中型」肉食恐竜が多くの地域で不在であった原因が解明されました。

大型の肉食哺乳類の子どもも、中型に相当する時期がありますが、成長が早く2~3数年で大人になります。

一方で、数十メートルに達する大型の肉食恐竜の子どもの場合、成長にかなりの時間を要し、中型種の限界である、体重1000キロを脱するには10年近くを要します。

これらの結果は、大型の肉食恐竜の若者たちが、本来の中型肉食種の位置を独占するのに十分な数が存在していたことを示唆します。

他の地域から侵入した中型種が生き残るためには、大型種の大人から逃げると同時に、彼らの若者とも獲物を巡る生存競争をしなければなりません。

しかも競争相手となる大型種の若者たちは日々成長し、ある時点を過ぎると侵入してきた中型種にとって致命的な捕食者に変貌します。

このような環境で中型の肉食種が生き延びるのはほぼ不可能といえます。

今回の研究でも、数少ない中型の肉食種が確認された地域では、大型肉食種がいないか、影響力が薄い地域に限られていたことも示されています。

今回の研究論文の第一著者であるシュローダー氏
今回の研究論文の第一著者であるシュローダー氏 / Credit:UNM