なぜ、北朝鮮のミサイルの性能が突然向上したかについては目下、専門家も推測する以外にない。北側のミサイル専門家がロシア軍からフィールドバックを受けていることは間違いないだろう。北製ミサイルにロシア製の優れたナビゲーションシステムまたは改良されたステアリング機構が装備された可能性も考えられる。また、ロシアは制御システム用の改良されたコンポーネントを提供したこともあり得るだろう。
北製ミサイルの性能向上は平壌とモスクワにとって朗報だが、韓国や日本など朝鮮半島周辺の国々の安全にとって懸念される内容だ。性能を高めた北製ミサイルや武器が海外に密輸される危険性も排除できない。
北朝鮮から約12000人の兵士が派遣された当初、西側諸国は「北朝鮮兵士はウクライナ軍の大砲の餌食となる」と軽く考えてきた。北朝鮮兵士は現在、前線から撤退したとも言われる。北朝鮮兵士にとって実戦経験がないこと、戦場が山や森といった環境ではなく、平地のため、平地戦、市街戦の経験のない北朝鮮兵士にとって危険が多い。しかし、経験を積んでいけば、北朝鮮の兵士の戦闘力はアップするだろう。ウクライナ戦争が終わり、帰国した北朝鮮兵士は韓国側にとって手強い敵となる。ミサイルは命中度を増し、兵士は戦闘経験を有するからだ。
最後に、北朝鮮ミサイルの命中度が向上したというニュースを読んで、ある面で少しほっとした。なぜなら、ウクライナには欧州最大の原発サポリージャ原子力発電所がある。北兵士の派遣先のクルスク州にもクルスク原発(4基の原子炉)が操業中だ。戦場で北朝鮮のミサイルが発射され、そのミサイルが目標と数キロ離れた原発に命中したならば、それこそ第2のチェルノブイリ原発事故となるからだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年2月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。