文系の不人気職種でランクインすることも多い営業職。属人的で手当たり次第の営業手法が非効率であるなどネガティブな印象は今も根強く残っている。ノルマが達成できないことによる心身の不調など、営業現場での悩みや課題が少なくない。
そうした課題を解決すべく、近年はITを駆使した営業支援ツールを導入する企業が増えており、例えば、SFA(Sales Force Automation:営業支援システム)やCRM (Customer Relationship Management:顧客関係管理)などはその代表だ。だが、導入効果として顧客管理などは達成されるものの、本質的な課題である新規顧客開拓や既存顧客からの売上増はなかなか達成できていない。
そうした背景の中、新しい営業手法として「インテントセールス」を打ち出したのが2021年7月創業のSales Marker(東京・渋谷区)だ。インテントとは「興味関心」のことで、インテントセールスとは、顧客の「今、欲しい」という購買意欲を捉え、それに合わせて最適なタイミングでアプローチを行う営業手法だ。従来の「見込み客リスト」に基づいたアプローチとは異なり、顧客のリアルタイムの行動や関心に基づいて、よりパーソナライズされた営業活動が可能になる。
同社が提供しているのは営業支援SaaS「Sales Marker(セールスマーカー)」で、AIを駆使したBtoBセールスサービスツールだ。AIが膨大な量のデータを分析し、顧客のインテントを正確に予測することで、インテントセールスをさらに効率化。同社が持っている520万法人の企業データおよび570万人の人物情報、160万社の部署データを利用している。
顧客のウェブサイト閲覧履歴、検索キーワード、ソーシャルメディアでの行動などを収集し、インテントデータを収集・分析する。インテントスコアを算出し、インテントスコアが高い顧客に対して、最適なタイミングでパーソナライズされたメッセージを送信する。つまり、自社に関連したキーワードを調べているターゲット企業がわかるのだ。
例えば、「オフィス移転」というキーワードで検索している企業があれば、その会社は将来的に物件購入や移転を検討している可能性がある。まずは顧客ニーズをリアルタイムで捉える。部署人物情報からキーマンを特定し、キーマンに合わせたパーソナライズメッセージを作成する。それらターゲティングされた企業に対してメールや電話などでアプローチすることができる。
また、すぐにアプローチしなくても、従業員数が急激に増加し始めたタイミングや、資金調達を行ったタイミング(これから事業拡大が加速し、社員が増えるかもしれない)など、オフィス移転ニーズが具体的に発生する可能性が高い準顕在層・潜在層を抽出しておけば、広告配信やメールマーケティング、セミナー招待、DMなどさまざまなアプローチ施策を展開できる。
営業マンの悩みとして、「代表電話を突破できない」「ニーズがないため話を聞いてもらえない」といった一般的なハードルがあるが、それを克服しやすくなるのは大きい。
新機能を搭載し使いやすくなった新バージョン
同社は先ごろ、「Sales Marker インテントセールス2.0」発表会を開催した。発表会には代表取締役の小笠原羽恭氏とCMキャラクターを務める俳優の斎藤工氏が登壇し、新しく開発された「インテントAI」の機能を紹介した。同社がこれまで展開していた「インテントセールス1.0」からのバージョンアップだ。
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同社はこれまで500社以上の顧客企業を支援してきたが、「サービスを使いこなせない」という顧客もあったという。以前のバージョンではトップページに50個以上のボタンがあり、初めての人が戸惑うこともあったため、使い勝手を高めるためにシンプルなトップページに変更した。ゲームの要素をゲーム以外の分野に取り入れることをゲーミフィケーションというが、同社は新たに開発したチュートリアル機能によって、Sales Marker初心者でも直感的にインテントセールスを実践できる環境を整えた。さらに実践レベルに応じてユーザーランクが上がるミッション機能を搭載し、ミッションをこなすだけで新機能や必要なアクションを迷わず実行できる仕組みになっている。
発表会では斎藤工氏が小笠原社長のレクチャーを受けながら、実際にアポイントを取るまでのデモンストレーションも披露した。斎藤氏は「アポイントを取るための電話をかける工程まで、クリック4つくらいで行ってしまう。触ってみるまでは、AIなどにあまり触れていない人には(作業が)難しいのではないかと思っていたが、一度トライしてみると、難しいという概念が取り払われると思う」と感想を話した。
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労働人口が減る中、大手企業でも過去10年間における営業担当者の充足率は最低水準になっており、中小企業の人手不足はさらに深刻だ。小笠原社長はこう強調する。
「営業ノルマを100%達成できる営業担当者は全体の20%と言われており、非常に達成が難しい状況。その課題を解決するのが、企業の検索行動から分かるニーズに基づき、顧客起点で行う新時代の営業手法であるインテントセールス」
AIの進化に伴い、Sales Markerを含むAI営業ツールはますます高度化していくことが予想される。AR(拡張現実)やVR(仮想現実)などの技術との融合も期待されるところだ。
(文=横山渉/ジャーナリスト)
提供元・Business Journal
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