道路のひび割れや損壊は世界中のドライバーや自治体にとって深刻な頭痛のタネです。
車のタイヤが破損してしまったり、大規模な交通渋滞や事故を招いたり、修理に多額の費用がかかったりと、その影響ははかりしれません。
こうした問題解決の切り札として、今注目を集めているのが「自己修復アスファルト」です。
イギリスのスウォンジー大学(SU)で行われた研究により、何と道路が自らの亀裂を“縫い合わせる”という発想で、わずか1時間以内に微小なひび割れを修復する技術が研究・開発されています。
これにより道路の穴が発生しにくくなり、結果的に車両修理費や道路整備コストを削減するだけでなく、石油由来素材の使用を減らして環境負荷を下げることも期待されています。
研究内容の詳細は『Digital Discovery』にて公開されました。
目次
- AIによって設計された素材
- アスファルトに内包された胞子が開き、わずか1時間でひび割れが自己修復された
AIによって設計された素材

従来のアスファルトは年数が経つと酸化や水分、温度変化による劣化が進み、微小な亀裂がやがて道路の穴につながります。
道路の穴は車両の損傷や交通渋滞、事故の原因となり、修理に多額の費用がかかる社会問題です。
一方で、アスファルトの主要成分であるビチューメン(石油由来の有機化合物)は、その分子構造が複雑で、これまで分子レベルでのシミュレーションが大変困難でした。
実験とコンピューター解析を組み合わせて、新たに「自分でひび割れを治せる」アスファルトを生み出す研究が進められています。
特に最近では、バイオマス廃棄物(藻類や樹木の廃材、廃食用油など)を利用することで、石油への依存度を減らしながら、道路の修復機能を付与しようというアプローチが注目を集めています。
本研究の大きな特徴は、AIと大規模なコンピューターシミュレーションを活用し、ビチューメンのような「複雑な有機分子の混合体」を効率的にモデル化した点です。