1月26日(日)、フランス南部で開催された2025年FIA世界ラリー選手権(WRC)第1戦ラリー・モンテカルロが最終日を迎え、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)のセバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組(GR YARIS Rally1・17号車)が優勝。エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(33号車)は総合2位で、カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組(69号車)は総合4位でフィニッシュした。なお、デイ3終了時点で総合6位につけていた勝田貴元/アーロン・ジョンストン組(18号車)、TGR-WRT2からのエントリーとなるサミ・パヤリ/マルコ・サルミネン組(5号車)は残念ながらリタイアとなった。

WRC第1戦、TOYOTAのオジエが通算10回目のラリー・モンテカルロ優勝を達成!エバンスは総合2位を獲得
(画像=▲2025年FIA世界ラリー選手権(WRC)第1戦ラリー・モンテカルロ 表彰式、『CAR and DRIVER』より 引用)

 ラリー・モンテカルロの最終日デイ4は、フランス南部ギャップのサービスパークからモナコへと向かいながら3本、合計50.90kmのステージを走行した。

 オープニングのSS16、続くSS17は、木曜日のデイ1でナイトステージとして走行したSS3、SS1の再走ステージだった。天気は早朝から良好だったものの、土曜日の夜に降った雨の影響でステージは一部が濡れていたり、凍結している区間もあった。また最終のパワーステージ、SS18はチュリニ峠の一部に積雪および凍結区間もあった。

 そのため3本のステージすべてにマッチしたタイヤを選ぶことは難しく、ドライバーたちは早朝サービスを離れる直前まで、エンジニアとタイヤ選びに頭を悩ませた。

WRC第1戦、TOYOTAのオジエが通算10回目のラリー・モンテカルロ優勝を達成!エバンスは総合2位を獲得
(画像=▲トヨタ GR YARIS Rally1・33号車(エルフィン・エバンス/スコット・マーティン)、『CAR and DRIVER』より 引用)

 夜明け前にスタートしたSS16では、オジエがベストタイムを記録。2番手タイムの総合2位エバンスとの差を24.3秒に広げた。オジエとエバンスは共に、金属製のスタッドが埋め込まれたウインタータイヤ4本と、2本のスリックタイヤ(スーパーソフト)を選択。

 彼らのチョイスは正しく、総合3位のアドリアン・フォルモーより20秒程度速いタイムを記録して差を大きく拡げた。しかし、続くSS17ではヒョンデ i20 N Rally1のフォルモーが選んだ4本のスリックタイヤが路面にマッチし、ベストタイムを記録。総合2位エバンスに4秒差、首位オジエには22.2秒差に迫った。

WRC第1戦、TOYOTAのオジエが通算10回目のラリー・モンテカルロ優勝を達成!エバンスは総合2位を獲得
(画像=▲ヴァンサン・ランデ/セバスチャン・オジエ、『CAR and DRIVER』より 引用)

 そして迎えた最終のパワーステージ、SS18はミックスコンディションとなり、全体的にはドライコンディションだが、標高が高いチュリニ峠の一部には凍結路面も残る状況。そのため上位3人のドライバーは、いずれもスリックタイヤとスタッドタイヤをミックスして装着しステージに臨んだ。

 そして、上位選手の中では一番最後にスタートしたオジエがベストタイムを記録。ラリー・モンテカルロ通算10勝目を獲得した。

 また、エバンスはパワーステージでラインが膨らみ土手に接触しながらも、オジエと0.215秒差の2番手タイムを記録。フォルモーを7.5秒差で抑えて総合2位を獲得し、スーパーサンデーも制覇。スーパーサンデーではロバンペラが2番手となったことで、TGR-WRTは総合順位、スーパーサンデー、そしてパワーステージのすべてで1-2を達成し、合計60ポイントを獲得。パーフェクト・ラリーを実現した。

WRC第1戦、TOYOTAのオジエが通算10回目のラリー・モンテカルロ優勝を達成!エバンスは総合2位を獲得
(画像=▲セバスチャン・オジエ、『CAR and DRIVER』より 引用)

 オジエのTGR-WRTでの優勝回数はこれで通算15回目となり、そのうちモンテカルロは3勝目となる。またジエはカッレ・ロバンペラ、過去に2回世界王者を獲得したカルロス・サインツと並び、トヨタのラリーカーで最も多くの勝利を飾ったドライバーとなった。トヨタのモンテカルロでの優勝は、今回が6回目となる。

WRC第1戦、TOYOTAのオジエが通算10回目のラリー・モンテカルロ優勝を達成!エバンスは総合2位を獲得
(画像=▲トヨタ GR YARIS Rally1 69号車(カッレ・ロバンペラ、ヨンネ・ハルットゥネン)、『CAR and DRIVER』より 引用)

 デイ3で総合5位に順位を下げたロバンペラは、SS16で3番手タイム、SS17で2番手タイム、SS18で4番手タイムを記録したことにより、総合4位を獲得。スーパーサンデーでも、オジエを抑えて2番手のリザルトを残した。

 ラリー序盤は思うようなタイムを出すことができず苦戦したが、終盤に向けて確実にペースが改善されていき、ポジティブな形でシーズンフル参戦復帰の初戦を締めくくった。なお、デイ3終了時点で総合6位につけていた勝田、総合7位につけていたパヤリは、デイ4オープニングのSS16でコースオフを喫し、リタイアとなった。

WRC第1戦、TOYOTAのオジエが通算10回目のラリー・モンテカルロ優勝を達成!エバンスは総合2位を獲得
(画像=▲2025年FIA世界ラリー選手権(WRC)に参戦するGR YARIS Rally1。ラリー・モンテカルロは合計5台のマシンで挑んだ、『CAR and DRIVER』より 引用)

■豊田 章男 (TGR-WRT会長) コメント
「記念すべき“セブのモンテカルロ10回目の優勝”で今シーズンの幕を開けることができました。2019年までのセブは色々なクルマでモンテカルロを6連勝。トヨタに来てくれた2020年からは1年おきに2位と1位の繰り返し…。その法則があったので今年は絶対に勝ってくれると思っていました。セブ、モンテカルロ10回目の優勝おめでとう!来年はそろそろ法則を破ってもらっていいと思っています。昨シーズンは、最終戦の最終日の最終ステージまで、ヒョンデと戦い続けた本当に楽しいラリーでした。但し、それはラリーファンとしての気持ちです。チームの一員としては苦しい気持ちになることの方が多いシーズンでした。今年はチームの一員としても“心の底から楽しいラリーだった”と思えるようなシーズンにしていきたいと思っています。そして、その気持ちを、またラリージャパンで味わいたい!ヤリ-マティ代表、ユハ代表代行、ドライバーのみんな、コドライバーのみんな、そして、チームのみんな、よろしくお願いします!わかっていると思いますが、今年のラリージャパンは最終戦じゃないですからね…」

■ヤリ-マティ・ラトバラ (チーム代表) コメント
「本当に嬉しい気持ちです。きっと、これ以上いいスタートは望めないでしょう。チームとして最大の60ポイントを獲得し、総合でも1-2-4フィニッシュを達成し、セバスチャン・オジエがラリー・モンテカルロ10回目の勝利を獲得するという、本当に素晴らしい、そして他に類を見ない偉業を成し遂げることができました。最後までコンディションは非常に厳しく、今朝のタイヤ選択は大きなストレスを感じるものでした。なぜなら、ルートノートクルーがステージを走り終えた後に、路面が凍結したからです。残念ながら、サミと貴元はコースアウトしてしまいましたが、彼らが安全策を選ぶように私がプッシュするべきでした。彼らにとって、このラリーは経験を積むことが全てでした。他のドライバーたちのおかげで最終的には上手くいったので、彼らに感謝したいと思います。とても見どころの多いラリーでしたし、今年はきっとエキサイティングなシーズンになると思います」

■エルフィン・エバンス (GR YARIS Rally1 33号車) コメント
「今回は典型的なラリー・モンテカルロとなり、ここ数年よりも少し過酷な週末でした。ですので、最後にポイントを獲得してフィニッシュすることができてとても嬉しく思います。今日は、非常に難しいコンディションで始まりました。最後の最後で、スタッドタイヤを4本選ぶという変更に踏み切りましたが、果たしてそれが正しい判断だったかどうかはわかりませんでした。結局、2つの選択肢にそれほど大きな違いはなかったようで、最後のパワーステージはかなりスリリングな展開になりました。フィニッシュまであと数コーナーというところで危ない瞬間がありましたが、幸いにも無事に切り抜けることができました」

■カッレ・ロバンペラ (GR YARIS Rally1 69号車) コメント
「モンテカルロは常にタフなラリーですが、今年は特にそうでした。個人的には、かなり難しい週末になってしまいました。望んでいたような結果やペースは得られませんでしたが、最終的には多くのポイントを獲得することができたので満足しなければなりません。今日は自分たちにとって悪くない一日となり、ベストを尽くし、安定性を保ち続けたことが報われました。チームに感謝します。次はスウェーデンなので、どうなるのか楽しみです」

■セバスチャン・オジエ (GR YARIS Rally1 17号車) コメント
「このラリーで10回目の優勝を飾ることができたのは素晴らしいことですし、信じられないほど幸せで、誇らしい気持ちです。このラリーは、私がラリードライバーになるという夢を与えてくれたものです。ですから、シーズンでもし1イベントだけ勝てるとしたならば、常にこのラリーを選びます。今年は最後のステージまで大接戦でした。コンディションの変化や難しいタイヤ選択、そして最後までプレッシャーを感じ続けるなど大変でしたが、なんとかうまくコントロールすることができたので良かったです。確かに危ない場面もありましたが、このラリーで勝つには運も必要だと思います。チームにとって最高のスタートが切れたので、これ以上は望みようがありません」

■勝田 貴元 (GR YARIS Rally1 18号車) コメント
「朝最初のステージがかなり難しいコンディションになることは分かっていましたが、凍結した右コーナーに差しかかった時、ペースノートにその情報が反映されていませんでした。かなり速度を落としてコーナーに進入したのですが、それでもクルマがワイドに脹らんで小さな溝に落ちてしまい、そこから抜け出せなくなってしまいました。それまでは、特に土曜日はペースも良かったので、かなり良い戦いができていたと思います。残念ですが、次のラリー・スウェーデンに向けて集中し、チームのために良い仕事ができるように頑張ります」

■サミ・パヤリ (GR YARIS Rally1 5号車) コメント
「今日のアプローチはこれまでと同じで、特にハードにプッシュするつもりはありませんでした。ただ、予想外の凍結したブレーキングポイントが一ヶ所あり、そこでミスを犯してしまいました。それまではすべて計画通りに進んでいたので、残念な結末となってしまいました。特に土曜日は、タイムが良くなり、フィーリングも良くなり、自信もかなりつきました。すべてがうまくコントロールできているように感じていただけに、このような結末を迎えるのは残念ですが、今回の事から学び、次のスウェーデンに臨みたいと思います」

WRC第1戦、TOYOTAのオジエが通算10回目のラリー・モンテカルロ優勝を達成!エバンスは総合2位を獲得
(画像=▲ラリー・モンテカルロ 結果、『CAR and DRIVER』より 引用)

 WRC次戦は、「ラリー・スウェーデン」2月13日から16日にかけて、スウェーデン北部のウーメオーを中心に開催される。

 雪と氷に覆われた森林地帯の未舗装路が舞台となるこのイベントは、2025年もシーズン唯一のフルスノーイベントとなる。ステージはすべて積雪路となり、ラリーカーは金属製のスタッド(スパイク)が埋め込まれた雪道専用の「スタッドタイヤ」を装着して走行。かたく締まった雪道や凍結路にスタッドがしっかりと食い込むことで、非常に高いグリップが得られる。そのため平均速度は例年非常に高いのが特徴だ。

文・横田康志朗/提供元・CAR and DRIVER

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