自動車業界向けにAI・自然会話技術を提供するセレンスは2025年1月16日、クラウドベースの「CaLLM(Cerence Automotive Large Language Model:自動車向け大言語モデル)」や組込み型小規模言語モデル(SLM)である「CaLLM Edge」をはじめとする大規模言語モデルファミリーを提供している。
今回、それらの機能向上を目的として、先進AI半導体メーカーのNVIDIAとの提携を拡大したと発表した。
これにより、CaLLMは、エンドツーエンドのクラウドネイティブなソフトウェア・プラットフォームである「NVIDIA AI Enterprise(エヌビデアAIエンタープライズ)」を活用するとともに、CaLLM Edgeの一部の機能は「NVIDIA DRIVE AGX Orin」によって強化されることになる。
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大量のデータとディープラーニング(深層学習)技術により構築された大規模言語モデルは、自然言語で会話ができたり、文書作成ができたりする高度な処理技術のことだ。
セレンスが持つクラウド型と組込み型の大言語モデルの両方で、車内の会話とAIを統合するには、ハードウェア、ソフトウェア、ユーザーエクスペリエンスの分野の専門知識を組み合わせ、幅広い分野で横断的な取り組みが必要となる。
そのためセレンスは、NVIDIAのハードウェアおよびソフトウェアのエンジニアと協力することで、自動車向け生成AIの製品化と生産スケジュール達成の能力強化を図ることになった。
具体的には、NVIDIAの「TensorRT-LLM」や「NVIDIA NeMo」を含むソフトウェアプラットフォームNVIDIA AI Enterpriseを活用することで、CaLLMの開発と導入を迅速化した。ちなみに、この「TensorRT-LLM」や「NVIDIA NeMo」は生成AIアプリケーションの構築やカスタマイズ、本番運用への展開を可能にするエンドツーエンドのフレームワークである。
セレンスでは、それらを通じて、以下のようなCaLLMファミリーの最適化とカスタマイズを実現していく。
まず、NVIDIAにより高速化したコンピューティングとSoC(software on chip)で、車載アシスタント性能を高速化し、NVIDIAの「NeMo Guardrails」の自動車向けに最適化された実装をすることで、セレンス搭載システムによる車内でのやりとりのニュアンス理解を実現する。また、NVIDIA DRIVE AGX OrinでCaLLM Edgeにエージェントアーキテクチャを導入して最適化を図り、次世代の車内ユーザーエクスペリエンスの向上を図っている。
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今回発表されたNVIDIAとの提携拡大により、セレンスは自動車メーカーと協力して次世代ユーザーエクスペリエンスを開発するための、拡張性と信頼性に優れたツールやリソースを得ることになる。
これにより、高度な性能進化、遅延の低下、プライバシーとセキュリティの強化、悪意あるインタラクションや不要なインタラクションに対する強固な保護がもたらされ、より充実した操作性と高い会話性能が実現する。
セレンスの製品技術エグゼクティブ・バイスプレジデントのニールス・シャンツ 「当社の言語モデルファミリーであるCaLLMの性能を最適化することで、ドライバー向けに生成AI搭載ソリューションの迅速な導入を目指している自動車メーカーのコスト削減と性能向上が実現できます。CaLLMを基盤として次世代プラットフォームを進化させることで、高度な機能を通じてより迅速かつ、信頼性の高いインタラクションをドライバーに提供でき、運転中の安全性、楽しさ、生産性が向上します」と述べている。
NVIDIAのオートモーティブ担当バイスプレジデント、リシ・ダル氏 「大規模言語モデル(LLM)は膨大な新しいユーザーエクスペリエンスをもたらしていますが、その規模や導入の複雑さから、開発者からエンドユーザーへ、AI搭載ソリューションの提供が困難な場合があります。今回の提携拡大により、セレンスは、NVIDIAの先進的なAIと高速化したコンピューティング技術を導入し、LLMの開発と導入を最適化できます」と語っている。
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