ホラー映画のような話ですが、現実に「ゾンビ化」する菌が存在します。
アイルランドの洞窟で、そんな新種の真菌が発見されました。
この菌は、クモに寄生し、その行動を操って開けた場所へと導き、やがてクモの体から胞子を放出するという驚くべき性質を持っています。
この発見を行ったのは、英国CAB International(CABI)の研究者ハリー・C・エヴァンス(Herry C. Evans)氏らのチームです。
この研究の詳細は、2025年1月24日付の『Fungal Systematics and Evolution』誌に掲載されています。
目次
- 宿主の行動を操る「ゾンビ菌」
- クモの行動を操るゾンビ菌をアイルランドの洞窟で発見
宿主の行動を操る「ゾンビ菌」
自然界には、宿主の行動を操る不思議な寄生生物が多数存在します。
特に有名なのが「ゾンビアリ」と呼ばれる現象です。
これは、Ophiocordyceps 属の菌がアリに寄生し、高所へと誘導して死なせることで胞子を効率よく拡散する戦略を取るものです。
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過去の研究では、ゾンビアリを作る菌がアリの神経系に影響を与え、行動を制御していることが明らかになっています。
しかし、これまでクモに対して同様の影響を持つ菌はあまり報告されていませんでした。
例えば英国諸島では、Gibellula 属の真菌がクモに寄生することが知られていましたが、クモの行動を変える例は確認されていませんでした。
ところが2021年、BBCの自然番組「Winterwatch」の撮影チームは不思議な発見をしました。
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北アイルランドの廃墟となった火薬庫の天井に、菌類に覆われたクモが張り付いているのを見つけたのです。