死刑囚に与えられる「最後の食事」。それは人生の最期に許される数少ない自由のひとつであり、多くの国では伝統的に尊重されてきた。しかし、そのリクエストには時折、驚くべき内容が含まれている。中には、膨大な量の食事を注文しながら一切口をつけなかった者や、「世界平和」など食事とは言えないものを要求した者もいた。

「最後の食事」—許される自由とその制限

  日本では、死刑囚に「最後の食事」を選ぶ権利は認められていない。多くの場合、執行当日の朝に刑が言い渡され、午前中に執行されるため、特別な食事が提供されることはない。しかし、死刑執行前に収容される前室には祭壇が設けられており、そこには生菓子が供えられている。これが、日本における「死刑囚最後の食事」に最も近いものとされている。

 しかし、死刑囚が処刑前に最後の食事を選べる制度は、多くの国で実施されている。ただし、すべての国や州で認められているわけではなく、特にアメリカでは州ごとに異なる規則がある。

 例えばテキサス州では、1998年に死刑囚ローレンス・ラッセル・ブルワーが膨大な量の食事を注文したにもかかわらず、一切手をつけなかったことが問題視された。この一件をきっかけに、同州では「最後の食事」の提供が廃止された。

 一方、最後の食事のリクエストには合理的な制限があり、高価すぎる食材や法律で禁止されているもの(アルコールなど)は却下される。これにより、あくまで常識の範囲内での選択となるが、それでも異様なリクエストは後を絶たない。