アストンマーティンが高性能スポーツカーのヴァンテージのオープントップモデル「ヴァンテージ ロードスター」を商品改良。4リットルV8ツインターボエンジンは最高出力665ps/最大トルク800Nmへとアップ。Zホールド機構を採用した電動ファブリック製ルーフは6.8秒で開閉が完了。ロールオーバー構造の強度と軽量化の最適化も実施。ユーザーへの納車は2025年第2四半期より開始予定
英国のアストンマーティンは2025年1月15日(現地時間)、同ブランドの主力スポーツカーであるヴァンテージ(Vantage)のオープントップモデル「ヴァンテージ ロードスター(Vantage Roadster)」の改良モデルを発表した。
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改良モデルの最大のトピックは、先にデビューしたクーペモデルと同様、動力性能のさらなる向上にある。フロントミッドに搭載する3982cc・V型8気筒DOHC32Vツインターボエンジンは、カムプロファイルの変更や圧縮比の最適化、タービンの大径化など広範囲に渡るチューニング変更を実施。最高出力は従来比で155psアップの665ps/6000rpm、最大トルクは同115Nmアップの800Nm/2000~5000rpmを発生する。高性能化に合わせて冷却機構も改良。オイルシステムおよび補助外部オイルクーラーの表面積を従来比で2倍に拡大してラジエーターを冷やす空気の流入量を50%増加させるとともに熱気のフローを改善し、合わせてインタークーラーの冷却水回路に追加の低温ラジエーターを、中央メインラジエーターに2機の補助クーラーを追加した。一方でトランスミッションには、最終減速比を上げる(3.083:1)と同時にキャリブレーションの最適化を図ったZF製の8速ATをリアミッドに配置。駆動系にはカーボンファイバー製プロペラシャフト付きアロイトルクチューブと電子制御デフのE-Diffを組み込む。発進時の加速性能を高めるローンチコントロールシステムも導入した。性能面では、最高速度が202mph(約323km/h)、0→62mph(0→100km/h)加速が3.6秒と公表している。
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前ダブルウィッシュボーン式/後マルチリンク式のサスペンションやビルシュタインDTXアダプティブダンパーで構成するシャシーのセッティング変更にも抜かりはない。フロント部ではサスペンションの取り付けポイントの剛性を高める目的でクロスメンバーを後方に移動させ、オンセンター/オフセンターのステアリングフィールを改善。また、サスペンションタワー間のねじれ剛性と横剛性の引き上げを狙って高剛性かつ軽量なフロントエンジン・クロスブレースを装着した。一方、リア部ではサスペンションタワー間の横剛性の強化を図って、コーナリング負荷下の剛性をアップ。オープンボディ化に伴う質量と重量配分の変化(前後重量配分はクーペの50:50から49:51に変更)を考慮して、リアダンパーに関するソフトウエアの再調整やマウントのギアボックス取り付け位置の見直しも行う。また、ロールオーバー構造の強度と軽量化の最適化も実施。アルミニウム製ロールオーバープロテクションシステム(ROPS)は“Castrusion(キャストルージョン)”と称するプロセスを採用し、鋳造と押し出し成形の両方から最適な要素を組み合わせる手法により、堅牢で軽量かつパッケージ化を容易にする機構に仕立てた。なお、構造強化およびルーフを含めた重量増は60kgに抑えている。
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足もとにはヴァンテージ専用開発“AML”スペックのミシュランPILOT SPORT S 5タイヤを装着し、ステアリングレスポンスやフロントエンドグリップをいっそう向上。サイズは前275/35ZR21(103Y)/後325/30ZR21(108Y)で、専用コンパウンドを採用する。組み合わせるホイールには、前9.5J×21/後11.5J×21サイズの鍛造5スポークアロイホイールを標準装備。オプションでマルチスポークやYスポークも設定し、カラーや仕上げも選択可能とした。一方で制動機構には、ドリルド加工を施した前・鋳鉄製Φ400×36mmディスク+6ピストンキャリパー/後・鋳鉄製Φ360×32mmディスク+4ピストンキャリパーを標準装備。キャリパーカラーは7色を用意する。オプションとして、カーボンセラミックブレーキ(CCB)も設定した。
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キャビン空間まわりを入念に補強したうえで配備するオープントップ機構には、従来のKホールドからZホールドに変更してスタックハイトを210mmまで短縮した電動ファブリック製ルーフを採用する。開閉は6.8秒で完了し、また最大31mph(約50km/h)までの速度域であれば走行中の開閉も可能。クルマの半径2m以内では、キーを介してのリモート開閉も実行できる。また、ルーフ自体は断熱材を含めた8層構造で構成し、ルーフを閉じた際の騒音レベルはクーペと遜色ないのレベルに仕上げた。
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エクステリアに関しては、ボディ幅を従来比で30mm拡大してワイドスタンスを強調するとともに(全長4495×全幅1980×全高1275mm/ホイールベース2705mm/トレッド前1665×1655mm)、随所に新デザインのパーツを組み込んで、力強さとスポーティさをより高めたロードスターに仕立てたことが訴求点である。フロント部は新造形のマトリックスLEDヘッドランプおよび6つのブロックからなるLEDデイタイムランニングライト(DRL)、開口部を広げたベーン付グリル、グリル両側のバンパーに追加した冷却用インテーク、新デザインの一体型スプリッターなどを採用して、ドラマティックで印象深いマスクを創出。一方でサイドビューは、新造形のベントに“ASTON MARTIN”ロゴ入りサイドストレーキ、フレームレスのドアミラー、格納式のドアハンドルなどを配して、独自の個性と新鮮さを際立たせる。トップのオープン時とクローズド時ともに、エレガントかつスポーティなフォルムを具現化したこともアピールポイントだ。そしてリアセクションは、拡幅した新造形のバンパーに大径のクワッドエキゾーストテールパイプ、空力特性を高めたディフューザー、ボディラインとシームレスに統合するソフトトップ格納部およびトランクリッドパネルなどを装備して、よりスマートで存在感のある後ろ姿を実現した。ボディカラーはイリデッセントサファイア、サテンイリデッセントサファイア、ブロンズフレアと呼称する3種類の新色を追加。また、トップはブラック、レッド、ブルー、ブラック&シルバーの4種類から選択可能としている。
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内包するインテリアはクーペと同様、極上のアーキテクチャーラインや最高級の素材を採用するとともに、最新のインフォテインメントシステムやコネクティッド機能を組み込んで、よりクリーンで快適なキャビン空間に仕立てたことが特徴である。具体的には、エルゴノミクスを向上させたうえでより低い位置に配したセンターコンソール、多様な情報表示と操作を司るピュアブラックの10.25インチTFTタッチスクリーンセンターディスプレイおよび10.25インチTFTドライバーインフォメーションディスプレイ、Surroundサウンドモードと QuantumLogicサウンドプロセッシングを組み込んだ360W/11スピーカーのオーディオシステム、3Dマッピングと衛星ビューテクノロジーを備えるとともにOTAアップデートを備えた新世代のインフライト・インフォテインメントシステム、スマートフォンとの連携を強化したコネクティッドシステムなどを採用。オプションとして、アクセラレイト(ヘアセルレザー&アルカンターラ)とインスパイア(セミアニリンレザー)のインテリアトリムや、2x2ツイルカーボンファイバーのトリムインレイ、1170W/15スピーカーで構成するBowers&Wilkinsオーディオシステムなどを用意する。シートには上質でしなやかなBridge of Weir製レザーを張ったスポーツプラスシートを装着。オプションでカーボンファイバー製パフォーマンスシートも選択可能である。
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なお、改良型ヴァンテージ ロードスターのユーザーへの納車は本年第2四半期以降の開始を予定している。
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文・大貫直次郎/提供元・CAR and DRIVER
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