先月号の当企画では2020年代に入ってからのシティ・ポップブームの影響で、80〜90年代にリリースされたアイドルが歌ったシティ・ポップの名曲が再発され、リバイバルヒットしていることを解説した。
そして現在、リバイバルヒットはシティ・ポップにとどまらず、さまざまエンタメジャンルで起きている。また単に曲を再発売するだけでなく、さまざまなエンターテインメントに発展。リバイバルヒットの動きは一過性のものではなく、最近では大きなムーブメントにまでになってきている。
SNSで昔の作品がいくらでも掘り起こせるように
いい曲は時代問わず話題になる
2010年代くらいまでは、音楽をはじめとしたエンタメ作品は、新しくリリースされたものを楽しむというのが基本で、過去の作品が再ヒットすることはあまりなかった。しかし、現在は事情が異なる。もちろん、YOASOBIやCreepy Nutsなどの新作は話題となり、ヒットをするが、それ以外にも、今年はRIP SLYMEの『熱帯夜』(2007年)やラッツ&スターの『め組のひと』(1983年)、松田聖子の『青い珊瑚礁』(1980年)など過去の作品がヒットしているのだ。
そのヒットの理由は、SNSの普及である。YouTubeなどで昔の作品がいくらでも掘り起こせるようになり、過去の作品でもいい曲であれば時代や世代を超えて話題になり、TikTokやInstagramでリール動画BGMとして使用し拡散される。そして、一気に多くの人、とくに若者に知られることで、新たなヒットにつながる。
日本の楽曲のリバイバルヒットは国内だけでなく、韓国でも起きている。人気グループNewJeansのメンバー、ハニがライブで歌った松田聖子の『青い珊瑚礁』が、SNSで瞬く間に拡散し韓国でヒット。このリバイバルヒットは他の80年代の日本の歌謡曲にも目を向けさせるきっかけになった。日韓の女性歌手が歌で対決する韓国の歌番組『韓日歌王戦』で、近藤真彦の『ギンギラギンにさりげなく』やテレサ・テンの『時の流れに身をまかせ』が歌われてヒットした。韓国ではいま、80年代の日本の歌謡曲のブームが起きている。番組自体もいまや高視聴率を記録する人気番組だ。
リバイバル現象は、過去作品の復活というだけではない。今年『Giri Giri』をヒットさせたKOMOREBI がMyM(森三中・大島、ガンバレルーヤの音楽ユニット)とコラボし、平成に大流行したEAST END×YURIの『DA.YO.NE』の歌詞を変えてリメイク。SNSで3000万回再生を超えるまでになっている。

またGLAYがデビュー30周年記念ライブとして、かつて20万人を動員した伝説のライブ『GLAY EXPO '99 SURVIVAL LIVE IN MAKUHARI』のセットリストを完全再現するライブを2024年6月8日、9日に埼玉ベルーナドームで開催した。当時からGLAYを聞いているファンはもちろん、SNSなどを通じてGLAYの90年代の活動を知ってファンになった若い世代も多く集まり、ライブチケットはソールドアウト。イベントは2日間で6万人を動員している。

映画業界でもグレードアップ版をリバイバル上映
音楽界だけでなく、映画界でも、過去の名作に目を向けたリバイバル上映が行われるようになってきている。
今号の表紙を飾るフィアット500が登場する『ルパン三世カリオストロの城』が今年の年末に初上映から45年が経過したことを記念して全国各地の映画館でリバイバル上映され、映画興行成績の上位にランクインしている。
アニメ映画『ルパン三世カリオストロの城』は1979年12月15日に公開。宮崎駿監督の初映画作で、綿密なキャラ設定とストーリー、カーアクションの迫力は、CGアニメ全盛となった今日でも色あせることがなく、不屈の名作として知られている。今回は通常の劇場公開に加えて、大スクリーンと高精度な音響システムが楽しめるIMAX劇場での上映も行われている。

1973年に上映され大ヒットとなった洋画『パピヨン』も来年1月から全国の映画館でリバイバル上映される。スティーブ・マックイーンとダスティン・ホフマンが共演した脱獄を題材とした作品で、初上映から50周年が経ち、フイルムに丁寧なレストアを行ったうえでの上映だ。映画がリバイバル上映される際は、IMAXでの上映やフイルムのレストアが行われるので、新たな感動を得ることができるのがうれしい。
SNSによって、現在は楽曲や映画を楽しむとき、いつリリースされた作品なのかは関係がなくなった。まだ埋もれたままの名作は多数ある。過去の作品は今後、“リバイバル”と“新しい発見”という視点で注目を集めていくだろう。
INFORMATION

松田聖子
『Seiko My Love -Yoshiko Miura Works-』
リリース中
CD2枚組/3300円

KOMOREBI X MyM
『DA.YO.NE』
リリース中
(配信限定)

『GLAY 30th Anniversary GLAY EXPO 2024-2025 in BELLUNA DOME』
リリース中
通常盤(Blu-ray)/6380円
通常盤(DVD)/5500円
文・FMステーション編集部/提供元・CAR and DRIVER
【関連記事】
・「新世代日産」e-POWER搭載の代表2モデル。新型ノートとキックス、トータルではどうなのか
・最近よく見かける新型メルセデスGクラス、その本命G350dの気になるパワフルフィール
・コンパクトSUV特集:全長3995mm/小さくて安い。最近、良く見かけるトヨタ・ライズに乗ってみた
・2020年の国内新車販売で10万台以上を達成した7モデルとは何か
・Jeepグランドチェロキー初の3列シート仕様が米国デビュ