一人暮らしをするなら、東京は最高の街である。実際に住んでいた頃、自分は東京から出ることなどチラりとも想像したことはなかった。
しかし、「子持ちで」となると話は全く変わってくる。東京で2人、3人と子供を持って複数の子供部屋が必要となると、東京で働く合理性がわからなくなってくる。
広告、IT、金融、商社のような高付加価値の仕事でハイスキルワーカーや、独立して安定的に年収3000万円以上くらい稼げる人なら話は別だが(いや、最近はそれでもキツイ)、最近のインフレや住居の高騰を前にすると23区内に家を持って育児中、となれば1000万円前後ではかなり厳しい。
筆者がサラリーマンをしていた頃は、今ほどインフレ、マンション価格高騰が起きていなかったが、子持ちの社員はほぼ例外なく、通勤時間が1時間半、2時間かけて埼玉や千葉から赤坂や六本木に通勤していた。
そうなると東京を離れるより、子供の数を絞る選択肢を取る人が出てくる。東京を離れることは多くの会社員にとって、キャリアを妥協することになるからだ。
つまり、東京は一人暮らしには最高でも複数の子持ちにとってはあまりコスパが良いとは言えない。
筆者はたまたま独立に際して東京から熊本へ移住したが、結果として良かった。仕事がどうにかなる立場で複数の子供を育てていくなら、東京より地方の方が遥かに割安で、はるかに快適な生活ができるからだ。
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東京一極集中は地方の仕事を充実させない限り、止めることは不可能に思える。地方自治体は「地方生活体験イベント」「移住者優遇措置」などで必死に盛り上げようとしているが、人は住む場所を合理的に決断するので目先のエサだけで定住を促すことは難しいだろう。
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