大手ゲーム開発会社ガンホー・オンライン・エンターテイメントに対し、30日、大株主のストラテジックキャピタル(SC社)が株主提案をしたと発表。同社の営業利益は2014年と比較し23年度は約7割減になった一方、森下一喜社長CEOの役員報酬は約2.8倍、任天堂社長の金額に匹敵する3.4億円に増加している点に疑問を呈し、報酬制度の是正を要求。また、12年にリリースした「パズル&ドラゴンズ」以降、約20の新規タイトルの開発に累計1000億円以上の資金を投入したと推定されるにもかかわらず、ヒット作が出ていないと指摘。現預金がパズドラのリリース前の64億円(11年度末)から23年度末には1400億円にまで増えて経営に緊張感が失われているとして、緊張感を増すために株主配当を増やすよう要求している。とはいえ、確かに営業利益と時価総額はここ10年で大幅に低下しているものの、23年12月期連結決算の営業利益は279億円の黒字となっており、売上高営業利益率は22.2%と20%を超え、経営的には安定しているともいえる。同社の現状をどうとらえるべきか。業界関係者の見解を交えて追ってみたい。
ガンホーの株式の約5.4%を保有するSC社は30日、ガンホーが3月開催予定の定時株主総会において株主提案権を行使すると発表。SC社が開設したサイト「ガンホー再起に向けた抜本的改革のために」によれば、SC社がガンホーに要求している内容は以下のとおり。
・ガンホーの過去10年の株主総利回りはゲーム大手会社のなかで唯一のマイナス圏に落ち込んでいるが、森下社長の役員報酬は利益水準が10倍以上の任天堂の社長と同水準である。基本報酬・業績連動報酬・株式報酬型ストックオプションのうちの基本報酬が、過去10年間で1.21億円から1.82億円に増加し、任天堂社長の0.78億円を上回っている。よって、役員報酬について固定報酬:業績連動報酬の上限額の比率を現行の1:1から1:3に見直すべき。
・パズドラのヒットにより現預金残高が約1400億円にまで増えており、今後10年以上ヒット作が出なくても安泰でいられるため、ゆとり経営に陥っている。また、発行済株式数に占める自己株式の比率が年々上昇して32.9%に達した結果、配当の支払総額が毎年減少している。よって、ガンホー単体の現預金残高889億円の20%に相当する178億円(1株当たりでは318円)の配当を求める。加えて、自己株式の消却を株主総会で決議できるようにすること、保有する全ての自己株式を消却することを要求。
・パートナーシップを通じた非公開化が最善の選択肢である。
「新作を出し続けて頑張っている」
もっとも、ガンホーの業績は悪くはない。23年度連結決算は、確かに営業利益は14年度と比べると約7割減となっているが、18年度以降はほぼ横ばいで推移している。23年度の売上高営業利益率は22.2%と20%を超えている。ちなみに任天堂は31.6%、カプコンは37.5%、スクウェア・エニックスは9.1%。
今回のSC社によるガンホーへの株主提案について、大手ゲーム会社関係者はいう。
「昨年、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が100億円規模の開発費を投入したといわれた新作ゲームタイトル『CONCORD(コンコード)』がリリースから2週間でサービス終了となったことが話題を呼びましたが、その一方で昨年1月にリリースされたインディーゲームの『Palworld(パルワールド)』が大ヒットするなど、新作ゲームの開発というのは当たるのかどうかがリリースしてからではないと分からないというギャンブル的な要素が強いです。なので、いくらパズドラを生んだガンホーといえども、10年の間でヒット作を生み出すということは簡単なことではありませんし、本当に『20作すべて不発』といってよいのかは疑問も感じます。
また、ゲーム会社にとってパズドラ級の大ヒットタイトルというのは10年に1度出るか出ないかというレベルなので、業界の人間としては、パズドラのヒットに甘んじずにコンスタントに新作を出し続けて頑張っているという印象ですし、パズドラのヒット直後の数年の業績と10年たった現在の業績を比べれば、大きく下がっていると批判するのはかわいそうな気もします。森下社長の報酬については、どう評価してよいのかよく分かりませんが、事実上のガンホーの創業者でもありますし、会社も黒字でしっかりと利益もあげているので、外部の人間がどうこういう話でもないような気もします」
(文=Business Journal編集部)
提供元・Business Journal
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