■8年間に及ぶタイムループ
より極端なものでは、2015年に23歳のイギリス人男性が医師に対し告白したもので、なんと過去8年間にわたり人生を繰り返してきたというのだ。
彼が口にするところの「時間のループに閉じ込められている」という感覚は、既存の体験の枠をはるかに越えていた。フランス・ブルゴーニュ大学に所属する認知神経心理学者であるクリス・ムーラン博士は、その内容に衝撃を受けたという。
「この男性には際立った印象を持ちました。彼には症状の自覚があるとはいえ、若くして体験した精神的な錯覚に起因する絶え間ない感覚刺激により、徹底して心を傷つけられてしまったのです」(クリス・ムーラン博士)
博士は続ける。
「彼が散髪に行った際の事例があります。その店に踏み入れたときから、彼はデジャヴを感じていました。そしてデジャヴの中でデジャブを感じる……。そうなると他には何も考えることができませんでした」(クリス・ムーラン博士)
彼を診察した医師は健康上の問題を発見することができず、脳スキャンでも異常は見られなかった。心理学的評価においても、目立った問題はないことが明らかとなった。
過ぎ去った時間の追体験をする慢性的な発作は、医学の見地からは通常、側頭葉や神経の障害と関連するものであると見なされている。
またこの事例に限っては、不安の連鎖による心因性デジャヴであるとの指摘もなされている。だがしかし、いまだに具体的な説明はされておらず、大部分は未解明と言うべき現状だ。
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(画像=Image by Couleur from Pixabay,『TOCANA』より 引用)