同年11月には、米議会の諮問機関「米中経済安全保障調査委員会(USCC)」が公表した年次報告のなかで、「中国軍は台湾に軍事侵攻するために必要な初期的能力をすでに獲得している」と強い危機感を示した。

同年5月発行の英『エコノミスト』誌も、「地球上で最も危険な場所(The most dangerous place on Earth)」と題し、「米中は、将来にわたって台湾有事を避けるため、もっと真剣に努力しなければならない(America and China must work harder to avoid war over the future of Taiwan)」と訴え、世界の注目を集めた。

2023年の1月27日には、米空軍のミニハン大将が内部のメモで「2025年に中国との間で戦争になる気がする。それが間違っていることを望むが」と警戒感を示したことが波紋を呼んだ。

翌2月2日には、米CIA(中央情報局)のバーンズ長官が講演のなかで、「2027年までに台湾侵攻を成功させる準備を整えるよう、習近平主席が人民解放軍に指示した」との情報を明かした。

だとすれば、残された時間は少ない。安倍晋三元総理は「中国との外交は、将棋と同じ」と述べていたが(『安倍晋三回顧録』中央公論新社)、そうした「神経戦」を繰り広げる余裕はなさそうだ。

安倍政権で「外交スピーチライター」(内閣官房参与)を務めていた谷口智彦教授(慶応大学大学院)は、「『安倍晋三 回顧録』公式副読本」と銘打たれた『安倍元首相が語らなかった本当のこと』(中央公論新社ノンフィクション編集部編)で、「もし安倍政権がもう1期あるとしたら、『皇統』か『台湾』が喫緊の課題になった時だと私は思っていました」と語っている。

「台湾」について「もし安倍さんが存命なら、岸田政権が出した安保強化の方向に満足しながらも、実行実践を急げ、急げと、ハッパをかけ続けたに違いない。代わってその役目を担える人がまだ乏しいですね」とも語っている。やはり、残された時間は少なそうだ(詳しくは拙著最新刊『台湾有事の衝撃』)。

果たして日本国は、台湾有事の衝撃に耐えられるのであろうか。その答えは、3月25日発売号の「夕刊フジ」で始まる拙連載「続・台湾有事の衝撃」で明らかにしていきたい。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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