【最新モデル試乗】最新アウディA5は一段と技術の高みに挑戦。時代に先駆ける積極姿勢に脱帽
アウディA5アバント 新型は従来のMLBから新世代のPPC(プレミアム・プラットフォーム・コンバスチョン)に進化。2.0TDIとS5が採用した48VマイルドHV(MHEVプラス)は、限定的ながら電動走行も可能にした(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

A5は久々のエンジン車の新世代。A4の後継モデル

 アウディ・ファンの私には、やや気がかりなことがあった。彼らは2021年に発表した「フォルシュプラング2030」という電動化戦略に基づき、2026年以降にリリースする新型車をすべてEVにする一方、エンジン車とハイブリッド車の生産は2033年までに終了することを目標として掲げていた。2026年まではあと1年少々しかない。エンジンを積んだ主要モデルのフルモデルチェンジは2020年のA3が最後。すでに5年近くも新型車が登場していなかった。

「エンジンを積んだアウディの新型車は登場しないのか?」 そんな懸念を抱いていた私に、先ごろ朗報がもたらされた。エンジン車/ハイブリッド車のA5とQ5が相次いでデビューすることになったのだ。

【最新モデル試乗】最新アウディA5は一段と技術の高みに挑戦。時代に先駆ける積極姿勢に脱帽
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

 ここでひとつ申し添えておくと、新しいA5(そしてQ5)は、従来からあるA5(同Q5)のポジションをそのまま引き継ぐモデルではない。これまでアウディのモデル名は、偶数がセダンもしくはワゴン(アウディはアバントと呼ぶ)、奇数がクーペもしくはコンバーチブルを指していた。しかし、e-tronと呼ばれるEVが増えたことを受けて、今後はEVに偶数、エンジン車/ハイブリッド車に奇数のモデル名が割り当てられることになった。

 新ネーミング第1号の新型A5は従来のA4とA5の両方をカバーするモデルとして誕生した。つまり、今後はセダン、ワゴン、クーペ、コンバーチブルを全部ひっくるめてA5と呼ばれるのだ。

 ただし、現時点で発表されているA5はセダン(リアゲート付きなので厳密には5ドアHB)とワゴンのみ。今後、クーペとコンバーチブルが追加されるかどうかについてのアナウンスはまだない。どうやらコンバーチブルは望み薄らしい。今回のモデル名変更に伴い、エンジン車/ハイブリッド車のボディタイプが減少する可能性は否定できない。

【最新モデル試乗】最新アウディA5は一段と技術の高みに挑戦。時代に先駆ける積極姿勢に脱帽
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)
【最新モデル試乗】最新アウディA5は一段と技術の高みに挑戦。時代に先駆ける積極姿勢に脱帽
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

 そうした「エンジン車不遇の時代」にありながらも、アウディの技術陣は新型A5の開発に全力を投じていると感じた。
 たとえば、プラットホームは長年使い慣れてきたMLBを捨て、PPC(プレミアム・プラットフォーム・コンバスチョンの意味)を投入。これによりステアリング系の剛性が向上したほか、電気系プラットホームが一新され、ユーザーインターフェイスも大型タッチディスプレイを用いた最新世代に置き換えられた。48Vシステムでありながら、条件によってはモーターの力だけでも走行が可能なMHEVプラスと呼ばれるマイルドハイブリッドを一部モデルに採用したのもPPC採用の恩恵だろう。

2リッターディーゼルのTDIは全域パワフルで完成度が高い

 フランスのニース近郊で開催された国際試乗会では、2リッターディーゼルを積んだTDIモデルのA5アバント、2リッターガソリンを搭載するTFSIモデルのA5セダン、そして3リッター・V6ガソリンが与えられたハイパフォーマンスモデルのS5セダンをテストした。ドイツ本国では、いずれのモデルにもセダンとアバントが用意されるほか、A5は前輪駆動と4輪駆動(クワトロ)を選択できる(S5はクワトロのみ)。試乗車はたまたま全車クワトロだった。日本市場導入モデルは、現時点では未公表。なお、MHEVプラスはA5TDIとS5に装備される。

【最新モデル試乗】最新アウディA5は一段と技術の高みに挑戦。時代に先駆ける積極姿勢に脱帽
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)
【最新モデル試乗】最新アウディA5は一段と技術の高みに挑戦。時代に先駆ける積極姿勢に脱帽
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

 最初に試乗したA5TDIアバントは、ディーゼル音がさらに静かになったほか、MHEVプラスの効果で低速域でのレスポンスが格段に向上していた。ディーゼルエンジンは全域にわたってガソリンエンジンを凌ぐ豊かなトルクを発揮するため、実に軽快な走りが楽しめる。

 乗り味の向上も印象的だった。現行A4で感じられた低速域でのゴツゴツ感はほぼ解消され、高速域ではアウディらしいフラットな乗り味が満喫できた。しかも、ステアリング系の剛性を高めたおかげでハンドリングはより正確になっている。ステアリングギア比を早めた結果、操舵量が全般的に少なくなっているのもうれしい。

 こうした基本的な傾向はA4TFSIセダンでも変わらない。だがTDIと違ってMHEVプラスがないため、発進時にはややもたつく印象を受けた。一方でエンジンの回転フィール自体はTDIより滑らか。トルク感は明らかに薄いものの気持ちいい。新型A5ではTFSIがエントリーグレードで、TDIが上位グレードという位置付けだという。

【最新モデル試乗】最新アウディA5は一段と技術の高みに挑戦。時代に先駆ける積極姿勢に脱帽
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)
【最新モデル試乗】最新アウディA5は一段と技術の高みに挑戦。時代に先駆ける積極姿勢に脱帽
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

 S5は全域でTDIとTFSIの両方を凌ぐパワー感と滑らかさを堪能した。アウディのSモデルは、この種のハイパフォーマンスモデルとしては乗り心地が快適なことで定評があるが、新型S5ではこの点がさらに進化。それでいてスポーティなハンドリングを実現しているのだから驚くしかない。ただしコーナリング時に重いV6エンジンをフロントに積んでいる影響を感じたのも事実。ハンドリングの軽快さでいえば、TDIのほうが一枚上手だ。

 新型A5は、現行A4に比べて全幅とホイールベースがともに拡大された結果、室内スペースの余裕が明らかに増し、インテリアデザインにも新しい手法が採り入れられ、高級感が漂う。現行型A4オーナーの私には、ちょっとばかりうらやましい存在だった。

【最新モデル試乗】最新アウディA5は一段と技術の高みに挑戦。時代に先駆ける積極姿勢に脱帽
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)
【最新モデル試乗】最新アウディA5は一段と技術の高みに挑戦。時代に先駆ける積極姿勢に脱帽
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

提供元・CAR and DRIVER

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