BMWアルピナが現行体制で独自開発の最終限定モデルとなる「BMW アルピナB8 GT」を発表。創業者のブルカルト・ボーフェンジーペンが常に目指した“速い車”への情熱をリスペクトして、BMW 8シリーズ グランクーペをベースに徹底したチューンアップを実施。パワートレインにはアルピナ史上最強の634ps/850Nmを発生する4.4リットルV8ビターボエンジンを搭載し、スポーティなダイナミクスとラグジュアリーカーのエレガンスを融合した内外装デザインを採用。販売台数は世界限定99台で、日本には30台を導入予定
独BMWアルピナおよび日本総代理店のニコル・オートモビルズは2025年1月20日、現行体制で独自開発の最終限定モデルとなる「BMW アルピナB8 GT」を発表した。日本での車両価格は左ハンドル3495万円/右ハンドル3540万円に設定。販売台数は世界99台限定で、日本には30台限定での導入を予定している。
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現行のBMW 8シリーズ グランクーペ(G15)をベースとする今回の限定モデルは、現在のBMWアルピナの体制で開発・生産する最後の限定モデルに位置する。アルピナ社(ALPINA Burkard Bovensiepen GmbH&Co.KG)は今から60年前の1965年にブルカルト・ボーフェンジーペン(Burkard Bovensiepen)氏がドイツのバイエルン州カウフボイレン(1978年に社屋をブッフローエに移設)にて創業した、BMW車をベースとした独自開発のモデルを生産し、販売する自動車メーカーで、創業当時はBMW車に組み込む独自開発のダブルチョーク・ウェーバーキャブレター「ALPINAユニット」 を販売して好評を博し、同社の礎を築く。その後、BMW 社とのパートナーシップを通じて活動するようになり、1978年に登場したB6 2.8を皮切りにBMW車をベースとする“B+数字”のオリジナルモデルを開発・生産するようになった。1983年にはドイツ政府自動車局によって自動車製造業者として登録される。しかし、2022年3月になるとアルピナ社はブランド商標権をBMW社に譲渡すると発表。ブルカルトの息子であるアンドレアス・ボーフェンジーペン(Andreas Bovensiepen)氏やフロリアン・ボーフェンジーペン(Florian Bovensiepen)氏ら首脳陣が、アルピナの会社の規模では今後進む電動化や自動運転に対応できないと判断したことによる決定だった。結果的にアルピナ社は、2025年一杯で独自モデルの開発・生産を終了する予定である。ちなみに、筆者は2005年にブッフローエのアルピナ社に取材で訪れたことがあり、ALPINAエンブレムを付けた青いファクトリーウェアを纏う熟練の工場スタッフが泰然自若とした姿で、精緻にエンジンや車体、内装材をハンドメイドで仕上げていくシーンが脳裏に焼きついている。広報スタッフは「ここで生産しているアルピナ車の4台に1台ほどが、日本に送られます。目の肥えた日本のユーザーにアルピナ車が高く評価されていることは、同社の誇りです」とコメントしていたが、この蜜月も間もなく終焉を迎えることになる。
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では、独自開発の最後の限定モデルとなるBMW アルピナB8 GTの特徴を紹介していこう。
まず“アルピナ史上最強”を謳う注目のパワートレインには、同社のB5 GTに搭載する4395cc・V型8気筒DOHC直噴ビターボ(ツインターボ)エンジンを専用チューニングで搭載。ロスを減らした吸気システム、エアフローの最適化を図ったエアボックス、そしてそれに合わせたエンジンマネジメント(ボッシュDME 8.8.T)とブースト圧の見直しを実施し、ベースエンジン比で13ps(9kW)/50Nmアップの最高出力634ps(466kW)/5500~6500rpm、最大トルク850Nm(86.7kg・m)/3500~5000rpmを発生する。また、エンジンルームにはブルカルト・ボーフェンジーペン氏のサインと車名および“00/99”シリアルナンバーを刻む専用プレートを装着した。一方でトランスミッションには最終減速比を2.81に設定したアルピナ・スウィッチトロニック付き8速スポーツ・オートマチック(ZF 8HP76)を組み合わせ、改良されたローンチコントロールを装備。セッティングとしては特にレスポンスと性能の向上に重点を置き、コンフォート・モードとスポーツ・モードでそれぞれ異なる優れた走行性能を具現化する。新しいセンターサイレンサーを組み込み、ニュアンス豊かでスポーティなV8ならではの排気音を生み出す新スポーツエキゾーストシステム、およびエレガントなブラック仕上げのツインテールパイプを配備したこともトピックだ。さらに、前後輪に駆動力を配分するトランスファーの最適化も行い、トルクの分配をよりリア寄りにチューニング。これに改良型ソフトウェアを組み込んだ電子制御ディファレンシャルを配備し、より俊敏かつダイナミックなドライビングを実現した。性能面では、0→100km/h加速3.3秒、巡航最高速度330km/hのハイパフォーマンスを成し遂げている。
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シャシー面については、新たにドームバルクヘッドストラットを組み込んでフロントエンドの剛性をアップ。また、ステアリングモードにCOMFORT/SPORT/SPORT+という3モードを設定し、操舵性はスポーティでダイレクトなレスポンスか、または適度に抑えの効いた穏やかなフィードバックとするかを、ドライバーの好みに応じて選択できる。一方、足もとにはアルミニウムサテン仕上げのアルピナクラシック21インチ鍛造アルミホイール(前8.5×21/後10×21)に、専用セッティング“ALP”のピレリP ZEROタイヤ(前245/35ZR21 96Y XL/後285/30ZR21 100Y XL)を装着。制動機構にはマルチピースでフローティングタイプのドリルドベンチレーテッドディスクに摩擦係数の高いブレーキパッドを組みわせるアルピナ・ハイパフォーマンスブレーキシステムを標準で組み込んだ。
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エクステリアに関しては、「形態は機能に従う(Form Follows Function)」というアルピナの哲学を踏襲しながら、最新のアレンジを随所に導入して、スポーティなダイナミクスとラグジュアリーカーのエレガンスを高次元で融合させる。ボディ下部にはカーボンファイバー素材のフロントバンパーエアダクト、サイドダイブプレーン、エアブリーザートリム、ディフューザーなどを装備。また、Bピラーとリア右エンドには“B8 GT”ロゴを、ドアシルプレートには前にブルカルト・ボーフェンジーペン氏のサイン、後ろにB8ロゴを入れる。ボディカラーは、定番の伝統色であるアルピナブルー(標準)とアルピナグリーン(標準)に加え、アークティックレースブルー、ヴェルダントグリーンパール、パープルシルク、エニグマティックブラック、クリスタルカッセリットブラックという5色の特別カラーを選択可能とした。
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内装についてもアルピナの伝統に則り、最高級の素材と調和の取れた美意識を備えるキャビン空間に仕立てる。シートの仕様としては、4種類のバリエーションから選べる専用のフルレザーシートを装備し、高品質なメリノレザーとアルカンターラのシートセンター部分の組み合わせを用意。完璧にコーディネートされたカラーアクセント、印象的なコントラストステッチ、そしてフロントシートバックレスト上部のブルカルト・ボーフェンジーペン氏のサインが刺繍によって入れられ、シート表面に彩を添える。アルピナ・レザー工房が製作する特別なオファーも提供可能だ。一方、トリムにはアルピナ・ウォールナット・アンソラサイト仕上げの高級ウッドトリムを配備。カップホルダーの蓋には金属製のインサートとともにブルカルト・ボーフェンジーペン氏のサインを刻印する。さらに、シルバーのアルピナ製フルアルミニウム・シフトパドル(B8 GTロゴ入り)や高品質なアルカンターラ製ヘッドライナー、BMW ALPINA B8 GTのメタルエンブレム入りラゲッジコンパートメントマットおよびフロアマット、シリアルナンバー入りステンレススチールシリアルプレートなど、専用アイテムを随所に採用した。
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なお、アルピナ社は2026年以降、ボーフェンジーペン(BOVENSIEPEN)社の社名を冠し、クラシックカー関連事業への投資や、これまでと異なる新しいモビリティの開発に挑戦していくと予告している。
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