AI開発のコストがかさむ部分は学習プロセスにあるとされます。例えていうなら学習塾でひたすら勉強するのなら塾代がかかります。ところがDeepSeekは着眼を変え、自分で考える自己進化型を取っているとされます。つまり家で独学で勉強するので塾代がかからないということでしょう。もしもこれが本当ならこれはアメリカのAI研究者には厳しいパンチだと思いますが、金食い虫でAI事業がなかなか収益化できないとされてきたことを考えれば「現状打破への大いなる刺激」とも言えます。

次に中国発の名もなき会社のAI開発は今後どのような影響を与えるかです。もっともありそうなのがまずDeepSeekの否定でしょう。アメリカの開発者がこれを素直に認めるわけにはいかないのだ、ましてやDeepSeekを使えばビッグデータとして中国に情報が流れるという展開になると思います。そのために米中での激しい開発競争と囲い込み、そして孫正義氏のスターゲートプロジェクトの早期展開を促すこともあるかもしれません。

私がこのニュースを見て思い出したのがアメリカとソ連の宇宙船開発競争でした。結局、あの競争はソ連が開発した世界初の人工衛星スプートニック(1957年)やポストーク1号に単身で搭乗したガガーリン大佐が人類初の有人宇宙飛行(1961年)をした話と似ています。その後、アメリカも猛追し、最終的にはアメリカが優位に立ちますが、それでもソ連⇒ロシアは宇宙開発ではアメリカから大幅に劣ることなくライバル同士の壁も下がりました。これが物語るのは開発費という金だけの問題ではないのです。それをやるという強い意志、そして権限と情報の集中であると考えています。

ならばDeepSeekの登場はAI産業を更に加速させることは間違いないと思います。AI産業についてはまだ夜明けから早朝ぐらいの段階であり、20年代は激しく、かつ恐ろしいほどのAI能力の加速度的展開が見込まれています。そうなることが倫理的に正しいかどうか、多くの意見があるわけで、私も意見はあります。ただし、世の中の動きは既にブレーキなき蒸気機関車状態であり、行きつくところまで行くのだろうと思っています。