また、アカウント削除後もデータ保持をする権限を有すると規約にあり、さらにユーザーと同アプリ間には機密保持契約がない。そのため、入力した情報の機密性が法的保護されることはないのだ。

これでは商業利用は難しいと感じる人がいるのではないだろうか。

2. 国家安全法リスク

中国の法律である「国家安全法」や「サイバーセキュリティ法」では、中国政府や共産党への中傷や反対活動が厳しく取り締まられている。DeepSeekに入力したデータが中国政府の名誉を毀損すると解釈される場合、中国法に基づいて責任を問われる可能性は排除できない。そしてその判断はあくまで中国当局の判断によるものだ。

DeepSeekは中国本土のサーバーでデータを処理・保存され、必要に応じて中国当局がアクセスできる。海外にいる我々日本人は、中国政府から国際的に追及されることはないが、将来的に中国を訪問した際に拘束されるなどを考えると、迂闊な投稿はできないリスクは常に付きまとう。

3. 誤った情報のリスク

最後は中国よりの誤った情報のリスクだ。

尖閣諸島の領土について問われると、DeepSeekは「中国の固有の領土」と堂々と答える。一方でChatGPTは「日本の領土」と回答する。台湾統一について尋ねると、DeepSeekは侵攻を肯定する。天安門については回答しない。

一方で複雑な計算問題などはしっかり解けるし、コーディングにも強い。用途を限定すれば問題なさそうに見えるが、中国共産党よりの偏った思想に触れる人や時間が増えることで、誤った認識が広がる可能性は意識しておきたい。

今後どうなるかはまだわからないが、少なくとも現時点ではDeepSeekを使う上でこのようなリスクが生じるという認識でいた方がいい。使用するならリスクを理解した上でオフラインにしたスタンドアロン機に限定するなどを勧めたい。

 

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