聖書に登場する巨人ゴリアテ。その名は、途方もない大きさの代名詞として語り継がれてきた。ペリシテ人の戦士としてイスラエル軍に立ちはだかった彼の物語は、ダビデが投石と剣で勝利を収めたことで知られる。だが、巨人と伝えられるゴリアテの身長は実際どれほどのものだったのだろうか?
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聖書が描くゴリアテの姿とその身長
『サムエル記』によれば、ゴリアテは6キュビトと1スパン」の身長を持つとされる。この古代の単位は正確な長さが明確ではないが、一般的な解釈では約9フィート9インチ(約297cm)に相当するという。しかし、古代の別の聖書訳「セプトゥアギンタ」では、ゴリアテの身長を「4キュビトと1スパン」と記録しており、この場合は約7フィート10インチ(約238cm)となる。
一部の学者は、ゴリアテの身長が単なる誇張表現であり、彼の強さや威圧感を象徴する文学的な演出であった可能性を指摘する。考古学者のジェフ・チャドウィック教授によれば、この数字はゴリアテの故郷ガテの城壁の厚さと一致しており、「ゴリアテは街の壁ほどの巨人だった」という比喩的な意味を持つと考えられる。
巨人の存在とゴリアテの健康状態 ゴリアテが「巨人」と呼ばれるほどの身長を持っていた可能性を支持する科学的な証拠も存在する。遺伝学者パトリック・モリソン教授によれば、ゴリアテは「先端巨大症」に由来する巨大症を患っていた可能性が高いという。この病気は下垂体に腫瘍が発生し、成長ホルモンの分泌が異常に活発になることで引き起こされる。
この症状により、ゴリアテは周囲から「巨人」と見なされるほどの身長に達した一方で、視覚障害や骨の弱化、心臓への負担といった深刻な健康問題を抱えていた可能性がある。事実、聖書にはゴリアテが盾持ちに誘導されて戦場に立ったと記されており、視覚の不調が示唆されている。
ダビデがゴリアテを倒した方法について、モリソン教授は「頭脳対筋力の勝利」と表現する。下垂体腫瘍により視覚が狭まっていたゴリアテに対し、ダビデは視覚の死角から投石を放ち、弱化した頭蓋骨に命中させたと考えられる。これが致命傷となり、ゴリアテは地に倒れた。