イラン軍が本格的に戦闘に参戦する危険性が出てきた。米メディアによると、イランは無人機や巡航ミサイルによる攻撃を計画しているという。イスラエル側もイラン軍の報復攻撃を予想、ネタニヤフ首相は4日、「われわれは自分たちを守る方法を知っている。われわれに危害を加える者は誰であっても、われわれは彼らに攻撃を加える」と述べている。
イラン革命防衛隊(IRG)司令官だったカセム・ソレイマニ将軍が2020年1月、バクダッド国際空港近くで米無人機の攻撃で殺害された時、イラン全土で追悼集会が開催され、イラン当局は米国に対して報復を宣言した。実際はイランと米国の対戦といった最悪の事態は生じなかった。同じように、イラン側はレバノンの親イラン武装勢力「ヒズボラ」によるイスラエルへのミサイル攻撃を強めるだけで、イスラエル軍と正面衝突は避けるのではないか、という見方がある(「ソレイマニ司令官は英雄だったか?」2020年01月14日参考)。
エルサレムからの情報によると、イスラエル側は全戦闘部隊の休暇を一時的に停止し、ミサイル防衛予備役の動員を発表した。軍はまた、イスラエルの全地球測位システム(GPS)を遮断した。GPS信号の遮断はミサイルやドローンなどGPS情報を使って攻撃する兵器を無力化するための処置だ。
参考までに、ガザ戦争の停止、人道状況の改善のためにカタールとエジプト両国が紛争当事国らと交渉を展開中だ。外電によると、6週間の停戦と人質40人の解放、イスラエル側からは投獄中の約700人のパレスチナ人を釈放するという調停案だ。イスラエル側の情報では、ハマスに拉致された人質のうち、約100人は生存しているという。
なお、テルアビブやエルサレムなどイスラエル各地で6日、人質の解放、停戦の早期合意などを求める大規模な抗議デモが開かれた。参加者らはネタニヤフ首相の退陣、早期選挙の実施などを要求している。
以上、ガザ紛争の半年間の経緯だ。ドイツのケルン大学政治学者のトーマス・イェーガー教授は6日、「イスラエルはパレスチナでの戦闘では情報戦で守勢に立っている」と指摘している。イスラエルはアラブ・イスラム圏だけではなく、欧米諸国、特に同盟国の米国からもガザ戦闘の即停止、人道支援の改善などを強く要求されてきた。その一方、イスラエル国内では人質解放が遅れているネタニヤフ首相の退陣要求が飛び出すなど、内外両面から強い圧力を受けている。
ガザの戦闘は半年前、ハマスの「奇襲テロ」から始まった。イスラエル側には自衛権があり、ハマスへの軍事攻撃には正当性があった。しかし、ハマスはイスラエル軍との戦いではガザ住民を人間の盾に利用するためパレスチナ人、特に女性や子供たちに多大の犠牲者が出た。その結果、圧倒的な軍事力を誇るイスラエル軍は国連を含む国際社会から批判にさらされることになったわけだ。国際社会は本来、ハマスの奇襲テロ、人質拉致を糾弾すべきだ。パレスチナ人の現在の人道的危機はハマスがもたらしたものだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年4月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?