現在、AIの台頭についての議論は現代的な課題と見なされがちだが、この懸念が初めて提起されたのは1860年代にまでさかのぼる。驚くべきことに、その発端はニュージーランドの羊飼いであるサミュエル・バトラーという人物によるものであった。

機械の進化を警告した歴史的な手紙

 1863年6月13日、ニュージーランド・クライストチャーチの新聞『The Press』に掲載された「Darwin among the Machines(機械の中のダーウィン)」と題する手紙は、機械の進化がもたらす潜在的な脅威を警告した。執筆者のバトラーは、チャールズ・ダーウィンの進化論を機械の発展に適用し、機械が意識を持ち、人類を凌駕する未来を予測した。

 彼は手紙の中で次のように述べている。

「我々は、自らの後継者を作り出している。我々が日々その肉体をより美しく、精巧に仕上げ、知性をもたらすことで、人類が知性を得たと同様の自己調整機能を機械に与えているのだ」

 バトラーは、機械が進化を遂げ、人間がその保護者から従属者へと変わる可能性についても言及した。この関係性を、かつて人類が馬や犬と築いた関係にたとえ、機械が人類を「親切に扱う」だろうと予測した。