上場する必要性やメリット
上場維持には多大なコストとリスクも伴うが、上場には慎重になるべきなのか。また、現在の環境を踏まえると、コストと労力をかけてまで上場する必要性やメリットは大きいといえるのか。
「勝手な印象ですが、できるだけ早めに業績を黒字化させ、それを継続させるということの優先順位が、ベンチャー界隈で少し落ちているように見えます。人材採用において調達額を自慢するような広告を出している企業も多いですが、本来は持続的成長に向けて利益を早くしっかり出せるように事業基盤を築いていくことを目指すべきであり、『(2)創業者・大株主による株式の現金化』に目がくらまずに地道に事業を改善・成長させていくことが肝要であることは今も昔も変わらないはずです。
もう1つ留意点としては、資金調達がしやすくなっていることがあります。ベンチャーキャピタルによるベンチャー企業への投資額は、リーマンショックの2008年以降、世界市場で7~10倍に増えています。日本市場は世界市場の100分の1と推測されており、それでも年間4000~5000億円が投資されています。15年前と違って資金調達のためのインフラが潤沢になっているので、極論をいえば15年前に10億円集めるのと、現在100億円集めるのとでは、ハードルの高さが同程度になっています。ですので資金集めだけが目的であれば、上場することだけが選択肢ではないはずです。赤字脱却の展望や動きも見えないまま上場する会社があるならば、その理由は何なのかを当事者や関係者も理解しておく必要があるように思います」(中沢氏)
また、大手金融機関系ファンドマネージャーはいう。
「ピクシーダストの上場と上場廃止については、さまざまな情報が流れてはいるものの、経営陣の考えも含めて実際のところはよくわかりません。また、赤字の企業が上場するということも珍しいことではありませんし、企業の創業者が上場を目指したり、ファンドなどの出資元が上場を急がせるというのは、ごく自然なことです。上場できたものの、実際に上場してみたら想定外のことがたくさん出てきて上場を廃止するということは経営判断としてあり得る話です。結果的に株価が大きく下落して損失を被る投資家が一定程度生じたのは事実でしょうが、ピクシーダストはここ数年は業績的には大幅な赤字でしたし、上場後に株価が下落するという事態は投資においては普通に想定されることなので、こればかりは投資家の自己責任としかいえない面もあるでしょう」
(文=Business Journal編集部、協力=中沢光昭/リヴァイタライゼーション代表)
提供元・Business Journal
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