社会民主党(SPD_のアヒム・ポスト議会副代表は更に一歩踏み込んで、「オーストリアの動向は保守派政党にとってリトマス試験だ。極右政党に媚びるか、民主的中道の政党に留まるかが問われている」と説明し、野党第1党「キリスト教民主同盟」(CDU)のメルツ党首に対してAfDと明確な距離を取るように」と牽制している。CDUは隣国オーストリアの国民党の姉妹政党だ。その国民党はキックル自由党と連立交渉を始める予定だ。SPDはCDU/CSUとAfDの連立の動きを恐れているわけだ。
また、左翼党のヤン・ファン・アーケン党首は「憂慮すべき信号だ。肝心な局面では、保守派は社会政策を一切許さず、極右に権力を委ねることを選ぶ」と「ライン新聞」に語ったている。同発言を説明すると、オーストリアの与党国民党は選挙戦では自由党との連携を強く拒否しながら、政権維持のため土壇場になって自由党に歩み寄ってきている、と受け取っているわけだ。
一方、AfDのアリス・ヴェイデル党首は「オーストリアの主要政党が自由党排斥を目的に構築してきた防波堤が大崩壊した。同じことがドイツでも当てはまる。AfDを排斥する動きがあるが、それらの障害は消滅していく運命にある」と指摘し、CDU/CSUに対して「AfDへの防波堤を撤廃すべきだ」と主張している。
ちなみに、「国際アウシュヴィッツ委員会」は、自由党に政権委任がなされたことに衝撃を受けたと表明した。執行副会長クリストフ・ホイブナー氏は、「この政権委任を受けた自由党は、他に類を見ないほど極右やネオナチ的な思想・活動に関与している政党だ。ホロコースト生存者にとって、この日はヨーロッパの忘却への道におけるさらなる暗い節目となった」と指摘、「多くの有権者が極右政党に投票し、かつてヨーロッパを破滅に追いやったイデオロギーを信じるようになったことは悲痛だ」と述べた。
アドルフ・ヒトラーはオーストリア人だ。ヒトラーは画家になる道を断念した後、ドイツに移り、そこで政治家となり、国民社会主義ドイツ労働者党(ナチス党)の指導者となった。オーストリア人のヘルベルト・キックル党首(56)はウィ―ン大学で哲学を学んだ後、欧州の代表的ナショナリスト,イエルク・ハイダーのスピーチライターとして務めた。そして2021年6月に自由党の党首に就任した。キックル党首は選挙戦では「自分は人民首相になる」と表明してきた。ドイツではAfDのこともあって、隣国のキックル自由党の動向に非常に過敏となっている。