■令和の現代だからこそ『3rd』
『eスポーツ』という言葉が世に広まり、ゲームのバランスを調整する「アップデート」が常識となった現代では、格ゲーもまた「競技」として洗練された側面が強まった感が否めない。
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もちろんそれはそれで喜ばしい進歩だが、そのマイルドな傾向に対し、漫画『HUNTER×HUNTER』のネテロ会長のように「そんなんじゃねえだろ!! オレが求めた武の極みは」という疑問を覚えている格ゲーマーも少なくないだろう。
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まだ「eスポーツ」という言葉が生まれる前に誕生した『3rd』は、現在の格ゲーの常識から考えると、信じられないほど尖ったキャラ性能、技性能のオンパレードである。
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過去作を知らない令和の格ゲーマーが3rdの強キャラを見たら、まるで年配世代から「昔は電車の中でも煙草が吸えた」と明かされた時にも似た衝撃を覚えるのではないだろうか。『カルピスウォーター』を飲んだ後で、カルピスの原液を舐めたときの衝撃にも似ていることだろう。
強キャラと弱キャラの差も激しく、人によっては「バランスが崩壊している」という印象を受けるかもしれないが、3rd固有のシステム「ブロッキング」が存在することで、高い読み合いとゲーム性、競技性を実現させている。
同システムは『スト6』の「ドライブパリィ」にも引き継がれており、やはり『ストリートファイター』シリーズを語る上で重要な作品であることは間違いない。
鈴木さんも「稼働から25年以上経ってもまだ多くのファンがいて、今年のEVO2024でも復活した『3rd』は、やはり完成された格闘ゲームだと思います」「ブロッキングからの返しや読み合い、ステータス的に低いとされているキャラでもそれらを駆使すれば勝てる醍醐味など、語りきれないほどの魅力があると思います」と、興奮した様子で語る。
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家庭用ゲームにも移植された同作だが、大半のプレイヤーが「基板とブラウン管の筐体で遊べる環境とは別物」と認識しており、日夜ゲーセンにて多くのプレイターが鎬を削っているのだ。
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そうした背景を踏まえ、鈴木さんは「昨今のゲームセンターでは生き残るため、プライズゲームや音楽ゲームを中心に導入し、古いビデオゲームがどんどん減らされている状況です」「しかし何とか、ビデオ筐体を残していければと考えています」と、昨今のゲーセン事情についてもコメント。
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続けて「『3rd』トッププレイヤーの対戦動画を見ると、プレイした経験のない方でも『やってみようかな?』と思ってもらえるくらい、見入ってしまいます。マイナー競技で普段全く見ないスポーツでも、オリンピック中継をTVで放送していると、つい見てしまう現象に通じるものがあると思います」「これからも筐体、基板、交流の場を残せるように頑張っていきたいと思います」と、今後の展望を語ってくれたのだ。
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今年のEVOにて『3rd』の覇者となったのが日本の選手・MOV氏であるように、日本の『3rd』勢は非常にレベルが高く、観客を「魅せる」プレイにも非常に長けている。
「立ちギガス」の第一人者であり生粋のエンターテイナー・はやお氏、日本原産「W吹上」の恐ろしさを世界に轟かせたトミナガ氏、中立実況「トミナガのターンです」があまりに有名なトクラ氏、レミーが弱キャラであること感じさせない驚異の制圧力を持つ厳密神・ピエロ氏、腕の靱帯と引き換えに世界最速の電刃波動拳を撃つ男・くに氏など、魅力あふれるプレイヤーに関しては枚挙の暇が無い。
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日本が世界に誇る格ゲーの名作タイトル『3rd』を、ぜひプレイしてみてほしい。
※記事内の画像は全て「アップル新北街道店」提供
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