2番目はトランプ氏の同盟者への厳しい対応だ、トランプ氏は最も親しい同盟者でさえも、自分に逆らったり、退屈になったり、スケープゴートとして必要になったりすれば容赦なく切り捨ててきた。米政治学者アンドリュー・ゴースロープ氏は「トランプ氏は最終的にマスク氏に飽き、新しい輝く存在へと目を向けるだろう」と予測している。

3番目は、共和党内での対立だ。マスク氏は共和党のプロの政治家たちを敵に回している。彼らは選挙で選ばれたわけでもないマスク氏が官僚主義の改革を仕切ることに苛立ちを感じている。党の指導部はマスク氏の行動を快く思っていない。曰く「政治とビジネスは違う」というのだ

最後は、対中政策での対立だ。トランプ氏は中国をアメリカの主敵と見なしているが、マスク氏は中国で大量の電気自動車を販売しており、貿易戦争や対立を望んでいない。マスク氏のテスラは上海にアジア市場向けの巨大工場を持ち、中国政府から補助金を受けている。中国市場はテスラの売上の4分の1を占めるほどだ。マスク氏は中国との協力関係を強化しており、これがトランプの反感を買う可能性がある。また、トランプ氏の関税を武器とした貿易政策に対し、マスク氏は基本的には反対の立場だ。

以上から、同記者は「トランプ・マスク組」の「ブロマンス」は近いうちに破綻するだろうと予想しているわけだ。

ところで、4つの理由のうち、最大の決裂要因は対中政策の相違だろう。マスク氏にとって中国は極めて重要な市場だ。中国政府との良好な関係がビジネスの成否を大きく左右する。このため、マスク氏が中国との関係を悪化させることは考えにくい。一方、トランプ氏は中国をアメリカの主要な敵と位置づけ、対中強硬政策を進めている。この根本的な立場の違いは妥協が難しい。トランプ氏にとって反中政策は彼の政治スタイルを象徴する。マスク氏が中国市場での利益を守ろうとすれば、トランプ氏から「裏切り者」扱いされるリスクが出てくる。すなわち、対中政策の衝突は、単なる一時的な意見の相違ではなく、両者の価値観や目的そのものの不一致に根ざしているからだ。