その伝でゆけば、筆者の人格は四十を過ぎて『産経』の「正論」と「産経抄」によって再形成されたといえる。「正論」を読み、また石井の「産経抄」をノートに書き写して、彼の当意即妙の文章や言葉遣い、そして社会事象の捉え方などを学んだからだ。
石井が師と仰いだ大の本読み山本夏彦は、「俺は斎藤緑雨に山田美妙を紹介してもらった」(人物名はうろ覚え)といった意味のことを書いている。読書を通じて人を知る、ほどの意味だろう。筆者も「正論」執筆陣にも石井にも会ったことはない。が、その人となりは良く知っている。
既存メディアの凋落が著しい今日、『産経』の存在は貴重だ。SNSの発信やYouTube番組もその多くは既存メディアが取材した情報を基にしている。既存メディアにしっかりしてもらわねば困るのだ。石井も草葉の陰から、学部と社の後輩阿比留瑠比の活躍を祈っていることだろう。