「先んずれば人を制す」の由来
ここからは「先んずれば人を制す」の由来を解説します。
古代中国で生まれた「先んずれば人を制す」
「先んずれば人を制す」は、古代中国の『史記-項羽本紀』から来ています。
実際に『史記-項羽本紀』には「先即制人、後則爲人所制」という言葉があります。
これは古代中国の殷通という人物の言葉です。
紀元前2世紀の終わり、秦王朝に対する反乱が各地で勃発しました。
その際、地方長官を務めていた殷通は自分も反乱を起こそうと考え、地元の実力者である項梁に相談を持ちかけます。
その時に出た言葉が「先んずれば即ち人を制す、後るれば則ち人の制する所と為る」だったとされています。
これは先手を取れば相手を抑え込むことができるし、後手に回れば相手に抑え込まれることになるという意味を持つ言葉です。
要は早く決起しないと有利に戦いを進められないことを表現した言葉でした。
「先んずれば人を制す」はそんな殷通の言葉から生まれた言葉とされています。
転じて、他人よりも先に行動することで有利な立場に立てることを「先んずれば人を制す」と表現するようになったとされています。
ただし、殷通の素早い決断は素晴らしかったのですが、話を持ちかけられた項梁は殷通をだまし討ちにして軍隊を乗っ取ってしまいます。
結局、殷通は自分の言葉である「後るれば則ち人の制する所と為る」を逆手に取られて皮肉な運命に巻き込まれてしまうことになるのです。
そういった逸話も含めて知っておくとより言葉の重みが伝わりやすいのではないでしょうか。