私も採用面接をコンスタントに行っていますが、最近は採用したくなる人材との遭遇が少なくなってきました。数はいるのですが、質が落ちているのです。それこそ民主党政権の頃は特上の若者が溢れていたのですが、今は並が並ぶ中で秀逸な人材を探し出すという感じになっています。つまり、海外移住したくても海外の方からお断りになるのです。
日経の「THINK!」のコメントに海外の方が給与がよい、というのがありましたが、これはイメージ先行で実態は違います。そんなに払いたくなる人材は極めて少ないのです。そもそも日本の資格試験が海外で流用できるケースはほぼありません。日本で資格を持った専門家でもゼロからなのです。海外生活をそんな甘いものにみてもらっては困ります。
もう1つは家族の問題です。国際結婚をされている場合は当該国に残るでしょう。が、離婚された方が非常に多いのもこれまた事実。日本人の国際結婚の離婚率は厚労省の2021年度の調査で51%。国内が36%なので離婚後に海外に残るハードルは高くなります。もちろん、おひとりで海外に残っている方もたくさんいらっしゃいます。が、最後に背中を押すのが医療と介護、それにマネー(収入)です。
カナダの医療は悪いと日本人は口をそろえて言うのですが、それならばカナダ人の平均寿命が世界トップクラスにあるわけないのです。つまり言葉と要領の問題なのです。だけどそううまくできる人は多くはいません。もう1つは介護。日本のように介護保険がないので1時間4-5000円の出費を覚悟し、かつ、施設に入れば政府系なら40万円、民間なら月100万円は覚悟です。収入は専業主婦をされていたり、別れた旦那に依存されていた方は厳しいですね。再婚する女性も多いのですが、日本人の相手を探す場合独身男性などほとんどいないのです。
事実、私の周りでも日本へ帰る決断をされる方はいます。ただ、帰国後も知り合いがおらず、非常に苦労しいているという話はよく耳にします。「残るも地獄、帰るも地獄」なのかもしれません。
海外で生計を立てていくのも一苦労です。ジャパレスで働けば日本語オンリーで行けるかもしれません。しかし、それでは何のために海外に来たのか、という疑問もあります。海外生活なんて相当心して立ち向かわないとできるものではありません。
そうはいっても20年も海外移住者が増え続けているというのは一部の日本人にとっては国内の住みにくさを感じているのかもしれません。人口減が続く中で海外移住による減少も加わると日本はボディブローのようになりかねない気もします。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年1月21日の記事より転載させていただきました。
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