初心者の時

2つ目は初心者の段階である。この段階で無理に自分の頭で考えてもろくな結果を生み出さない。

茶道や武道の修行のプロセスには「守・破・離」と呼ばれる3つの段階がある。

「守」は、師の教えや型を確実に身につける段階。 「破」は、他の流派の良いところも取り入れて発展させる段階。 「離」は、独自に新しい価値を確立させる段階。

初心者とはここでいう「守」の段階である。この段階で自分の頭で考えるとほとんどの技能の獲得は失敗する。理由は自己流に走ると「やるべきこと、重要度が高いこと」ではなく「楽にできそうなこと。やりたいこと」ばかりが偏重的になり、その上誤った解釈で間違った型を反復で訓練してしまうことになるからだ。

自分自身、新たな技能を身につける時、たとえば作ったことがない料理に挑戦する時は自己流ではなく、まずはレシピ通りに徹底して何度も繰り返して作る。

「ここでこの調味料を入れなくてもいいのでは?」「下ごしらえを省いても問題ないのでは?」刹那的に湧いてきた疑問を押し込め、レシピなしで作れるようになり、味も安定化するまで自己流は混ぜない。初心者の段階を抜け出した後に「この工程はまるごとカットしてみよう」「砂糖ではなく還元麦芽糖でどのくらい結果が変わるかな?」といろいろ試してみる。

いきなり勝手にアレンジを加えると料理は失敗し、「自分にとってこのレシピは好みではない」と将来、発展する可能性をまるごと切り捨てることになってしまうのだ。

自分の頭で考えろ、という提案は自分の頭で考えてはいけない過程を経たステージからの主張であることを忘れてはいけない。人間には感情があり、多くのバイアスを受ける。何もかもすべてを自分の頭で考えてベストプラクティスを出し続けられるほど、多くの人に論理的な振る舞いをする再現性がない。なら「この局面では自分の頭では考えてはいけない」とルールを理解しておいた方がうまくワークすることが多いと思っている。

 

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