平時から飛行甲板に搭載するのは塩害ももとより、特にステルス機の場合困難でしょう。整備には通常機よりも手間がかかる機体です。ただ有事になれば一時的に行うことになるでしょう。

無人機に関しては米国だけでなくトルコも艦載型UAVを開発中ですから、これに早期警戒レーダーを搭載すればいい。既に申し上げているように世界では空母機能をもった汎用揚陸艦が多数就役、あるいは計画されており、これらに搭載する早期警戒無人機はニッチとはいえ、一定規模の市場になるでしょう。もしかして米空母もこれを導入するかも知れません。

記事には単艦で出るような話がありますが、ナンセンスです。「守るフネから守られるフネへ」ですから、当然「護衛艦」をつけることになります。ただ空母化するのであれば他の艦への給油能力は不要でした。これは航空燃料を搭載するように改良すべきだと思います。

それと空母化に関して言えば、今後導入されるであろう、おおすみ級の後継がどうなるかが影響するでしょう。常識的に考えればこれは多目的揚陸艦となるでしょう。当然VTOL機の運用も考えられるでしょう。いずも級と新揚陸艦の「半空母」でも4~6隻あれば相応の戦闘機を運用できます。

今後の運用検討にもよりますが、いずも級、それから新型揚陸艦は以前から申し上げているように「半空母」になるのではないでしょうか。艦載機のすべてを全部運用するのではなく、通常は4~8機程度の戦闘機を搭載し、必要とあらば、地上基地から増派する。

あるいは整備は限定的に行って、燃料や弾薬の補給を主に行う。つまりは完全に自律した空母ではなく、空母の機能をある程度もった艦として運用するのではないでしょうか。

いずも級2隻に、揚陸艦3隻程度で、実質空母1から隻分の機能をもたせる。

また陸上基地の敵の間の中継基地として補給を主として行う、なども考えられるでしょう。陸上基地から出撃して、「半空母」で着艦して燃料や弾薬を補充して再出撃するのであれば、陸上基地からの往復に比べれば搭乗員の疲労も少なく、時間も節約できます。

空母(この場合軽空母)はかくあるべきという定義も運用もありません。要は何のために洋上で運用できる戦闘機を使うのか、ということでしょう。例えばエアカバーは陸上機にまかせて、少数のVTOL機を対地支援で攻撃ヘリのように半空母から反復して出撃させるなどの使い方もあるでしょう。

要は海空自の空中給油機や、電子戦機、早期警戒機、無人機などの装備体系と、運用によって空母の運用も変わってくるでしょう。他国と同じようにする必要はありません。もっとも自衛隊にそのような統合運用構想がつくれるか、というのは大変疑問ではありますが。

編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2023年12月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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