さらに蛇足を重ねるなら、先のインタビューも、こう言い換えられよう。

もし、日本が他国から攻撃を受けた場合に、「もう抵抗やめなさいよ、相手の軍門に下れば戦闘が止まるんだから」、「世界経済にも迷惑かけるからやめなさい」みたいなことを他国から言われても、おかしくありません。でも私は、そうは言われたくない。その意味で、我々が台湾を支えておくことには意味がある。けっして他人ごとではないという思いを強く持っています。

……小泉悠専任講師がこう語る未来が訪れないことを強く望む。

鶴岡路人著『欧州戦争としてのウクライナ侵攻』(新潮選書)も借りよう。

国際政治の長い歴史に照らしても、これほどまでに白黒、善悪が明確であるのは珍しいといえるのが今回の戦争である。(中略)

今回の戦争におけるウクライナ人によるロシアへの抵抗は、人間が命をかけてでも守りたいものは何かという、戦後の日本人がほとんど問われることのなかった問題を投げかけている。

そのとおり。けっして「どっちもどっち」ではない。「どっちもどっち」とうそぶく連中は、「人間が命をかけてでも守りたいものは何かという」根源的な問いから逃げているだけの卑怯で卑屈な恥知らずである。

ならば、現在の中東情勢を巡る議論は、どうだろうか。

つい最近まで、ロシアの侵略を力強く非難してきた論者らまでが、平然と、ハマスもイスラエルも「どっちもどっち」とうそぶく。ロシアの「侵略」は咎めても、ハマスの「テロ」は咎めない。そもそもハマスをテロ組織と認めず、NHK以下主要メディアは「イスラム組織ハマス」と報じる。残念ながら、彼らが「ウクライナの教訓」を学んだ形跡は見られない。

(次回に続く)

 

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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