エルサレムからのメディア報道によると、「イスラエルとイスラム組織ハマスは22日、受刑者や人質の一部を解放するとともに、戦闘を少なくとも4日間休止することで合意した」という。実行は23日から開始される。ガザには、約240人の人質が拘束されている。カタール政府によると、ハマスがこのうち女性と子供の計50人を解放するのと引き換えに、イスラエルは同国内で収監しているパレスチナ人の女性や子供を釈放。イスラエル政府によると、ハマス側が追加で人質を10人解放するたび、休止を1日延ばすという(エルサレム発時事電)。

戦争当事国の間で「クリスマス停戦」、「イースター休戦」など重要な宗教の祝日を契機に戦闘を一時止めることがある。ウクライナ戦争でも正教会のクリスマスやイースターが近づく度にクリスマス停戦、イースター停戦が叫ばれた。ポジティブにいえば、紛争を行う政治家、指導者が国民的重要な宗教行事を利用して、紛争解決を実現しよとする試みと言えるわけだ。

戦争を終わらせるためには、政治家だけではなく、宗教指導者の責任も大きい。フランシスコ教皇のウクライナ戦争の和平調停の平和特使、イタリア司教会議議長のマッテオ・ズッピ枢機卿は今月15日、説教の中で「戦争が起きている時、何もせずに静観などできない」と述べている。宗教家の偽りのない告白だ。

宗教指導者には、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教、正教会、仏教など宗派の違いこそあれ、紛争や戦争が眼前で展開されている時、それを止めさせる使命がある。特に、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、正教会は「信仰の祖」アブラハムから派生した宗教だ。換言すれば、同じアブラハム家出身の兄弟といえる。兄弟同士が残虐な武器を持って互いに殺し合う戦争は本来、あってはならないのだ。

ウクライナで、そして中東で、戦争の火が一刻も早く消えることを願わざるを得ない。「アブラハム停戦」の実現のために、宗教指導者は可能な限りの手段を駆使してその使命を果たすべきだ。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年11月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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