また私は此の思索の中に、自反という要素つまり自らを省みることがなくてはならないと思っています。『論語』の「学而第一の四」で、曾子は「吾日に吾が身を三省(さんせい)す」と言っています。此の「三省する」とは日に三度自分を反省するではなくて、学んだ事柄を自分の日常に活かしているかと何度も反省することです。それでなくては本物にはなり得ないということです。

世の中は絶えず変化し、変化と共に新たな思索が次々生まれ、人類社会は継続進化して行っています。時代変われども本質的に変わらぬ部分も勿論沢山ありますが、学び薄くして唯我独尊の世界に入ったらば大変な間違いを犯しかねません。学んで反省し活かして行くという繰り返しの中で、人間は成長して行くことが出来ます。換言すれば、それが人間力を高めることに繋がって行くわけです。学びと思索は年齢云々関係なしに、常に平衡裡に為されて行かねばならないのです。

編集部より:この記事は、「北尾吉孝日記」2023年5月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。