戴冠式は1000年の伝統に基づくもので、70年ぶりだった。そのため王室問題専門家は、「戴冠式では全ての関係者が神経質になっていた。経験した者が誰もいないからだ」と評していたのが印象的だった。

BBCは80歳を過ぎた女性にインタビューしていた。彼女は、「10歳の時、エリザベス女王の戴冠式が行われたことは聞いていたが、何も憶えていない。チャールズ国王の戴冠式が自分にとって初体験だ」と答えていたから国民の大半にとって戴冠式の様子を見るのは初めてだったわけだ(「チャールズ国王は“聖霊”を受けたか」2023年5月8日参考)。

参考までに、欧州の王室では世代交代が進んでいる。スペインの国王フアン・カルロス1世(86)は2014年6月2日、退位を表明し、フェリペ皇太子(55)に国王を譲位した。スウェーデンでは2010年6月に平民出身のダニエル・ウェストリング氏(50)と結婚したヴィクトリア王女(46)の国民的人気が高い一方、女性問題でスキャンダルが発覚し、人気を落としたカール16世グスタフ国王(77)の退位を要求する声が高まっている。「ヴィクトリア王女が女王に就任すべきだ」という世論調査結果が公表されるなど、王室は揺れている(「欧州王室」で世代交代の風が吹く」2014年6月8日参考)。

欧州王室では世代交代が進む一方、王室のあり方にも変化がみられる。オランダのアレクサンダー国王は3代続いた女王時代とは違った王室の在り方をみせてきている。

デンマークのフレデリック新国王は皇太子時代、マラソン大会に自ら参加するなどスポーツ好きで知られている。欧州の伝統的な王室のデンマークでどのような新しい王室を生み出すか注目される。

ちなみに、英国では昔から女王時代のほうが国は栄えた、といわれてきた。それだけに、男性国王の奮闘が願われる。女王がいなくなった欧州の王室は寂しくなった。近い将来、新しい女王の誕生が期待できる王室はスウェ―デンだろう。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年1月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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