連合国側にとって、大島駐独日本大使が東京に電信を送り続けていた、ヒトラーの計画を満載した真珠湾以来の暗号電文は宝の山だった。が、FDRが真珠湾奇襲を知っていたことをデューイが公然と演説した日には、欧州のアイゼンハワーの任務が更に困難なものになるとマーシャルは直感したのだった。
熟考したマーシャルはデューイに手紙を認めた。手紙の添え書きにはこう書かれていた。
親愛なる知事殿
この手紙に関してはキング提督以外の者には相談しておりません。キングと私はパールハーバーを調査する議会の政治的な反発にどのように対応すべきか準備しています。
私が貴殿に申し上げる事柄は最高機密に属するものです。貴殿が手紙の内容を他の誰にも知らせず、読み終えたら返却するか、あるいはこれ以上は読まずに使いの者にこの手紙を返すか、どちらかを選んで頂きたくお願いいたします。
デューイは手紙を持参した使者に、これ以上は読まずに返却すると告げた。そして手紙の意図を知っているかのように、珊瑚海やミッドウェーの戦いの前に破られた暗号を使い続けるほど日本は愚かではないとも述べ、FDRは出馬を取りやめて弾劾に備えるべきだとも口にした。
デューイは二日後、同じ使者から新たな添え状付きの同じ手紙を受け取った。彼が、沈黙を守るという要請には答えられないこと、手紙の写しを保存したいこと、の二つを告げると、使者はその場からマーシャルに架電して申し出を伝えた。マーシャルはそれに同意し、電話口のデューイに要旨こう述べた。
大島駐独大使と東京のやり取りは、現在も「真珠湾」当時と同じものである 珊瑚海とミッドウェーの方針は、日本の通信を傍受して決められた 暗号解読のことを日独が知れば、極めて悲劇的な結果がもたらされる
デューイは暗号解読のことに沈黙した。そしてFDRが大勝した。もしデューイがFDRの暗号話を暴露していたら、結果はどうだったろうか。トランプが負けた20年の選挙でも、「ニューヨークポスト」によるハンター・バイデンのラップトップ事件のスクープを知っていたら、バイデンに投票しなかったとする有権者が大勢いた。
デューイは48年の大統領選でもトルーマンに敗れ、55年までニューヨーク州知事を続けた。が、4選はFDRをして、翌年2月のヤルタ会談で取り返しのつかない密約をさせてしまい、自身の命も縮めてしまった(4月逝去)。彼が開発に着手した原爆とヤルタ密約によるソ連参戦は日本に大惨事をもたらした。
そしてデューイを沈黙させたマーシャル。彼の共産主義への無知・無警戒が共産中国を生んでしまったことをマッカーシーやウェデマイヤーはその著書で述べている。デューイには「FDRは知らない」と述べたが、トルーマンの中国政策を忠実に実行する様子を見れば、FDRに知らせていなはずがない。
が、デューイもFDRもマーシャルも、その時に彼らが考えた自国の国益、今でいう「America First」に基づいて、一致団結して行動していたことは想像できる。ニッキー・ヘイリーもこの22日、「トランプに投票する、バイデン政権が大惨事だからだ」と述べた。
【参考文献】
J・W・ジョーダン「FDRの将軍たち」国書刊行会22年11月初版 G・モーゲンスターン「真珠湾」錦正社99年12月初版(原著47年刊) J・マッカーシー「共産中国はアメリカが作った」成甲書房05年12月初版(原著51年刊) A・C・ウェデマイヤー「ウェデマイヤー回想録」講談社学術文庫97年7月初版(原著58年刊)
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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