以前も本欄に描きましたが、森内閣で防衛庁総括政務次官(今の副大臣)を拝命した時、尊敬する吉原恒雄・拓大教授(故人)を次官室にお招きしてお話を聞いたことがありました。

そのとき吉原先生が「あなたは自衛隊を好きですか?」とお訊ねになり、私が「もちろん好きです」と答えたところ、先生は少し悲しそうな顔をされて、「総括政務次官をやめるとき、あなたはきっと自衛隊を嫌いになっているでしょう。良かれと思って指摘をすればするほど疎まれるようになる。残念ながらここはそういう組織なのです」と仰ったことを強烈に覚えています。

これは自衛隊に限らず、日本の組織の多くに通底するものなのかもしれませんが、この国の明るい未来のためには、こういった同一性の強い組織の過剰な自己防衛、異論の排除といった体質は、どんなに抵抗があったとしても改めなければならないと思います。独善に陥ることなく、これを貫くことの難しさを改めて痛感させられます。

前回の本欄で、陸上自衛隊第八師団長他の幹部を乗せたヘリコプターの墜落事故について記した際、「何故熊本から奄美経由で宮古島まで移動するのに、高遊原分屯基地にある固定翼連絡偵察機を使わなかったのか」との疑問を提起しましたが、師団長と幕僚長は時間と負担軽減のために民航機で移動していたのだそうです。訂正してお詫び致します。

広島サミットを間近に控えて、関心はバイデン米国大統領参加と、サミット後の解散・総選挙の有無に移りつつあるようですが、一体総選挙で何を問うのか、今のところ判然とはしません。故・安倍総理は「危機突破解散」と銘打って解散を断行し、勝利を得て政権基盤を強化しましたが、あの顰に倣うとすれば、どのような論点で国民に信を問うのが国家国民のためになるのか、よく考えるべきだと思います。

「核兵器のない世界」は理想ですが、当面目指すべきは「核戦争のない世界」であり、両者は似て非なるものです。

核兵器を放棄したウクライナに対し、米・露・英・仏・中の核保有国がその安全を保障するとしたブダペスト合意が全く履行されず、ウクライナの国土が蹂躙されることとなったのは何故なのか、この検証も責任の追及も曖昧なままです。INF条約なき後の北東アジア地域における核戦力のバランスも議論の核心でしょう。画期的な広島サミットにおいて、このような核心的議論が話し合われることを期待しております。

皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

編集部より:この記事は、衆議院議員の石破茂氏(鳥取1区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2023年5月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は『石破茂オフィシャルブログ』をご覧ください。