率直に言って、嶋氏に対してはもう反省することを期待していない。なので、二度目の謝罪をしてほしいとも特に思わない。
私が問いたいのは、こうした人物が「歴史学者」を名乗り、公的な(=国が運営する)研究者のプラットフォームであるResearchmap を使って、他人(與那覇)の言論活動の全体を「典型的な「トンデモ」と化し」「もう帰還不能点を越えている」(原文ママ)のように誹謗することの、妥当性である。
嶋氏が自身のブログやTwitter ではなく、わざわざResearchmap に中傷文を発表したのは、「公の媒体でトンデモのレッテルを貼ることで、與那覇を研究者のコミュニティから追い出そう」とする意思の表れだろう。嶋氏の同業者である「歴史学者」の諸氏は、こうした行為をどう思っておられるのだろうか。
私自身、2011~14年にはTwitter を使っていたため、本名やハンドルネームで多くの研究者がアカウントを持っていることをよく知っている。中には当時、(少なくとも私の認識では)かなり親しく会話させていただいた人もいる。
しかしそうしたTwitter 上の歴史学者たちが、嶋氏のこれらの行為を諫めた例は、仄聞するかぎり今のところほとんど無いようだ。
人文学の稀な長所は、政治的な友敵の別や経済的な損得の計算とは異なる次元で、人間である以上はこだわるべき意味・尊重すべき価値が存在すると、気づかせてくれる点にある。
嶋氏が繰り返す差別と誹謗中傷のツイートにも、そうした学者の真贋を見分けるリトマス試験紙としての意義はあろう。もし読者が、いまも同氏の発言を肯定的に扱う人文系のアカウントを見かけたら、ぜひ本稿の存在をお伝えくださるとありがたい。
私としてはそれを機に、歴史学者たちが良識を目に見える形で発揮し、彼ら/彼女らの営む学会ないし学界が、健全な場所であることを社会に示してほしいと願っている。
もちろん、そうしない自由も彼ら/彼女らにはある。その場合は、歴史学者とは嶋氏のような誹謗中傷を容認する人々だという事実に基づき、同氏および(私の観点では)大差ない振る舞いを示す研究者を代表として採り上げ、その知性のなさと不要性をより一層批判してゆきたいと思う。
編集部より:この記事は與那覇潤氏のnote 2024年2月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は與那覇潤氏のnoteをご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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