実際、マングローブ・キリフィッシュはこれまでの研究で、水中から飛び出して最大66日間を地上で過ごしたとの記録が報告されていました。
なので動画内で説明されている魚も、マングローブ・キリフィッシュだと思われます。
この魚は体長3センチ前後であり、ジャンプの際には自分のサイズの8倍の高さまで跳ね上がることが可能です。
また今回撮影された魚は自らの全長の約6000倍もの距離を移動し、15時間も地上に留まり続けていました。
移動の目的は、新たな本拠地を探すためです。
この魚は基本的には同じ淡水域で一生を過ごすのですが、資源をめぐる競争が激化したり、危険な天敵がやってきたりすると、地上に飛び出て、安全な淡水域を新たに探しに行くといいます。
しかし最も気になる点は「この魚がどうやって地上で呼吸をしているのか」ということでしょう。
その驚くべき秘密についてディーコン氏が教えてくれました。
「そんな所から呼吸するの⁈」酸素の取り込み方がスゴい
エラは空気中では機能しないため、大半の魚は地上に放置されると酸素不足に陥って死んでしまいます。
しかしトリニダード島のキリフィッシュはそうなりません。
ディーコン氏によると、彼らは地上にいる間は「尻尾」を通して呼吸できるシステムを進化させたからだといいます。
本種の尻尾は他の魚たちに比べて、非常に薄く、細胞数個分の厚みしかありません。
そのため、皮膚表面のギリギリのところを血液が通っています。
本種の尻尾を顕微鏡で観察してみると、毛細血管の周りを赤血球がくるくる回転している様子がはっきり見えるという。
「空気と毛細血管を隔てる細胞が2〜3個しかないので、尻尾からでも酸素を取り込むことができるのです」とディーコン氏は説明しています。
つまり彼らは水中ではエラで呼吸し、地上では尻尾で呼吸する能力を手に入れた珍しい魚なのです。