先進操船支援技術への取り組みも
ホンダは、1964年に初の船外機を発売してから今年で60周年を迎えた。これにあたって、ホンダマリン事業の取り組みと今後の方向性についての説明会がさる11月27日に実施されている。その内容をここでお伝えしよう。
ホンダマリン事業の歩み
ホンダは、軽量・廉価な2ストロークエンジンが主流の時代に、環境に配慮したという4ストロークエンジンでマリン市場に参入した。これは、「水上を走るもの、水を汚すべからず」という信念に基づくものだという。初のホンダ船外機GB30の発売は1964年、以降、各種機械の動力として使用可能な4ストローク汎用エンジンを独自に進化させてきた。
大出力ニーズに対応した45馬力の船外機BF45(1990年)、欧州の排出ガス規制であるボーデン湖規制に適合したBF8B(1992年)、ホンダ独自の技術PGM-FIの導入(1998年)といった歴史を重ね、現在では、2馬力から350馬力までの計25モデルを世界中で販売、累計生産台数は219万台(2024年10月時点)にのぼる。
高出力船外機の市場投入~フラッグシップモデルBF350~
2024年2月には、市場の高出力ニーズに対応し、ホンダとして最大出力となる350馬力のV型8気筒エンジンを搭載した船外機、BF350を発売。フラッグシップモデルである同機は、高出力と静粛性を両立するとともに、低燃費、静粛性・低振動を実現したとしている。
ホンダとして初搭載のトリムサポート機能により、リモコンのボタン操作で、船外機の回転数や速度に合わせて、あらかじめ設定した船体姿勢への自動制御も可能。今後は同機の技術を水平展開し、2030年までに順次、新モデルの投入を予定しているという。
今回このBF350を搭載したボートに試乗させていただく機会を得たが、その加速性能はパワフルの一言。回転数も5500rpm以上回ることができ、80km/hの速度で巡行することも可能だ。
体験価値の向上~先進操船支援技術~
水上の移動をより安心・快適にすることを目標に、ホンダでは先進操船技術の研究にも取り組んでいるとのこと。
①マルチビューカメラシステム
船艇の前後左右にカメラを設置し操船者の手元ディスプレーに表示することで、操船時の死角を低減。桟橋や障害物に近づくと、物体との距離に応じて2段階で接近を通知し、操船者に注意を促す。
②着桟支援システム
ボートユーザーが操船時に最もストレスを感じるとされる(ホンダ調べ)離着桟時の操船をサポートする。カメラ・各種センサーの情報をもとに自艇の位置を把握し、障害物や空いている停船スペースを認識、停船場所までの最適ルートを辿るように操船を支援。トレーラーに積み込む場合は、船艇のカメラでトレーラーを認識。風や潮の流れを考慮し、船艇の進入角度を調整しながら、まっすぐトレーラーに載るよう軌道を補正する。
カーボンニュートラルへの取り組み
ホンダは、2050年にホンダの関わる全ての製品と企業活動を通じてカーボンニュートラルを目指す、という目標の実現に向けて取り組んでおり、その領域には水上のモビリティも含まれるという。2023年8月には、島根県松江市にて、小型船舶向け電動推進機プロトタイプの実証実験を開始。これには、電動二輪車にも活用されている着脱式可搬バッテリー「ホンダ Mobile Power Pack e:(モバイルパワーパック イー)」を搭載。
工場の環境負荷低減にも取り組んでおり、細江船外機工場(静岡県浜松市)では昨年から太陽光発電システムを導入。今後は、再生可能エネルギーのさらなる活用を促進・拡大するために、リチウムイオン蓄電池などの導入も推進していくとのことだ。
本田技研工業の二輪・パワープロダクツ事業本部、同事業統括部長である鶴薗圭介氏は以下のようにコメントしている。 「ホンダの船外機はプロフェッショナルユースからレジャーユースまで幅広いお客様に選ばれ、今年で60周年を迎えました。1964年の船外機市場への参入から60年間、『水上を走るもの、水を汚すべからず』の考えに基づき、独自のエンジン技術を活かした高い耐久性や環境性能を持った船外機を提供してきました。今年発売したフラッグシップモデルBF350にとどまらず、今後も継続的に新機種を投入し、水上での自由な移動の喜びを拡げてまいります」
文・CARSMEET WEB編集部/提供元・CARSMEET WEB
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