先ほど言ったように、トカゲの尻尾はたった1回の自切でも、硬い骨は再生されなくなるので、完全な尻尾を取り戻すことは二度とできません。

ただ、トカゲの生態に詳しい豪カーティン大学のダミアン・レットゥーフ(Damian Lettoof)氏によると、切断面の椎骨と幹細胞が残っていれば、「理論的には、再生できる尻尾の回数には制限はない」といいます。

しかしこれはあくまでも理論上の話でしかありません。

現実的な話をすると、トカゲが切れた尻尾を再生できるのは生涯でも1〜2回が限度だと指摘されているのです。

一体なぜなのか?

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尻尾の再生にはすごいエネルギーが必要/ Credit: canva

1つ目の要因は、幹細胞が枯渇することです。

尻尾の再生には幹細胞が必須であることは先にお話ししましたが、同じ部位で何度も再生をしようとすると、幹細胞の供給が追いつかなくなり、最終的には細胞分裂が止まってしまいます。

2つ目の要因は、切断面の重大な損傷です。

尻尾は切断面に沿ってスパッと切り離すことができますが、例えば、天敵に尻尾の根元まで深く傷つけられたりした場合、再生のプロセスが正常に機能しなくなります。

そして3つ目の要因は、尻尾の再生に多大なエネルギーがかかることです。

尻尾を再生させるには、特にタンパク質やカルシウムなどの重要な栄養源が必要であり、それだけの栄養が取れない環境下では、尻尾の再生が不完全になったり、再生自体ができなくなります。

また一度の再生で体内のエネルギーを大量に消費するので、何度も尻尾を作り直すことは不可能なのです。

トカゲは尻尾の自切や再生によって体調を崩すこともあり、メスの場合は産卵ができなくなることもあるといいます。

以上の理由から、トカゲが尻尾を再生できる回数は1〜2回が現実的な数字と言えるでしょう。

私たちからすれば、トカゲは簡単そうに尻尾を切り離し、再生しているように見えますが、本当は多大なリスクのある最終奥義なのです。