速読術の限界を理解する
キングス・カレッジ・ロンドンで神経学を研究しているアン・ロール・ルクンフ氏は、「速読術はまやかし」だと論じています。
マサチューセッツ工科大学の認知科学者であるメアリー・ポッター氏らが、視神経の構造や文字を理解する脳の仕組みから速読術を検証し、速さと精度はトレードオフであることを示しています。ほかにも、速読に関する批判的な論述を展開している研究は多いのです。
速読の指導法には、さまざまなものがありますが、その多くは、視線の動きを制御したり、文字をすばやく認識したりする訓練を伴います。しかし、これらの訓練によって、読解速度が実際に向上するかについては、科学的な根拠は乏しいのです。
速読によって読解速度が向上しても、読み取った情報の理解度が低下する可能性があることが、研究によって示されています。これは、速読によって、読者の注意力が分散され、重要な情報を見逃しやすくなるためと考えられています。
速読には流派があり、その理論や方法論は統一されていません。また、速読の効果を検証した研究も内容にばらつきがあります。速読の効果を検証するにはさらなる研究が必要になると思われます。一方で、速読の有効性を疑問視する多くの研究は数多く存在します。
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尾藤 克之(コラムニスト、著述家)
2年振りに22冊目の本を出版しました。
「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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