ベツレヘムの教会にはクリスマスの飾りはない。パレスチナ自治区の暫定政府が管轄するベツレヘム市当局は、「殉教者に敬意を表し、ガザの人々との団結を込めて、クリスマスの装飾やお祭り要素をすべて撤去する」と発表したため、各教会もそれに従っているわけだ。世界最古の教会の一つであるキリスト降誕教会の前に、クリスマスツリーは見られないという。

バチカンニュースは、「観光業はほぼ完全に停止状態に陥っている。今年はほとんどのキリスト教巡礼者が外出を控えており、多くの店が閉店している。市当局はクリスマスの飾りを撤去し、教会は大規模なクリスマスパレードを中止している。今年、ベツレヘムの聖夜は静かなままだ」という現地報告を掲載している。

国内総生産の3分の2以上は、クリスマスシーズンにイエスの生誕の地を訪れる世界からの巡礼者が落とす外貨で占められている。今年はほとんどホテルのベッドは空という。多くのレストランや土産物店は閉店。タクシー運転手は国境検問所で客を待っている。ハマスとイスラエルの間の戦争により、現在イスラエルとヨルダン川西岸への渡航警告が出ている。

ユダヤ教、キリスト教、そしてイスラム教はアブラハムを「信仰の祖」とする兄弟宗教だ。イスラム過激派のハマスは「ユダヤ民族の壊滅」を目標に掲げ、イスラエルは「ハマスの壊滅」のためにガザ地区で戦闘を進めている。「世界で最も有名なユダヤ人」イエスの生誕日に、長男のユダヤ教と3男のイスラム教の和解というクリスマスプレゼントをもたらすキリスト教(次男)の指導者は出てこないのだろうか。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年12月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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